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ガーゴイルたちとの戦い⑥

「……っ____!?」 サンが今まで培ってきた戦闘力を発揮してくれたおかげで、それから暫くの間は白い破片がパラパラと舞い落ち続けていた。 とはいえ、僕ら三人の体にもその破片は当たった筈なのだが、さほど痛みも不快感も感じられない。 未だに敵の片割れによって抑えつけられてしまい逃げ場のないミストの様子を確認するため、ちらっと目線を左横へと移動させた直後のことだ。 僕はその目に映り込んだ、その光景があまりにも衝撃的だったせいで言葉を失ってしまう。更に、それだけではなく両足が強力な接着剤でくっついてしまったかのように、その場で固まってしまったのだ。 いつの間にか、ついさっきまでは単なる白い鳥だと思っていた敵の姿が変化していた。今までと変わっていないのは、強い魔力を操る術を持つミストの自由を奪い行動を制限するべく、敵の片割れが凄まじい力で仲間を抑えつけているという事実だけだ。 突如として変化した白い鳥の大きさは、ニンゲンである僕らより一回り大きいように見える。だが、その肌はダイイチキュウのニンゲンや、ミスト達エルフのように柔らかくないのは見ただけで察することができたのは所々その白肌がひび割れているかのようにギザギザの亀裂が走っている。 穏やかな微笑みを浮かべているように見えるものの、その反面無機質さが滲み出ている表情と、全身に所々亀裂が走っているのは、まさに僕らダイイチキュウで暮らしていた時に美術館で何度か目にしたことのある【石像】そっくりだ。 更に背中からは広げられた羽根が生えているのだけれど、表面を覆い尽くす均等な大きさの羽毛の部分が、それぞれ一枚一枚別のニンゲンの顔になっていることに気付いてゾッとしてしまう。それぞれ《怒り・悲しみ・叫び》の表情が規則的な順番で立体的に浮き出ているのも尚更不気味さを醸し出しているといえる。 ここにきて、今まで沈黙を貫いていた誠が重々しそうな声色で、ぽつり――と呟く。 「あれは……あの羽根に立体的に浮かんでいるのは……もしかしたら、かつてダイイチキュウの公園で起きた※※※※の犠牲者たちの顔なのか!?よくよく見てみれば、子どもを含む老若男女が苦悶の表情を浮かべているようにも見える____」 ぽつりと誠が呟いたのだけれど、それよりも僕は他に気になることがあった。確かに、誠が言うように《敵の見た目》に関しての変化が気になるというのも分からなくはない。 けれど、僕は四方八方に飛び散った破片がどうなったのかが気になって仕方がなかったのだ。 再度、辺りや地面を見渡してみても飛び散った破片が見当たらない。 (どうして急にさっきまで落ちてた筈の破片が消えたんだ――何か、うまくは言えないけど嫌な感じがする____) そんな不安に囚われるばかりだった僕の目に、またしても意外な光景が飛び込んできたのは、それからすぐ後になってからのことだ。 弱りきっていたミストを頭上から、眩い一筋の光が差し込み、空からまるで天使の如く美しい女性が舞い降りてきて、救いの手を差し伸べる。 あまりにも唐突な出来事だからか、ミストは救いの手をとるのを躊躇してしまう。しかしながら、突如として空から舞い降りてきた女性はとてつもなく儚くて魅惑的な笑みを浮かべながらミストの様子を見守っている。 「ΨβθЩЩ……(ねえさん)……っ__」 ぼそっとミストが何事かを呟いたように見えたけれど、エルフ族ではない僕には意味さえ分かりようがない。 それでも、ミストが苦痛を抱いているのは理解できる。出会ってから、今までにこんな辛そうなミストを見るのは、初めてのことだ。 その直後、空からふわりと優雅に舞い降りてきてから、ただひたすらにミストの側で清らかな笑みを浮かべつつ身動きひとつとれない彼を労るように見守っていただけの美しい女性が突如として行動にでる。 女性が、ミストの体を包みこむようにして抱擁する。 ミストは今まで受けていた苦痛が全て取り払われたといわんばかりに、まさに今――女性が浮かべているような穏やかで幸せそうな笑みを、今までとはうってかわって浮かべた後に此方へと視線を向けてくる。 その両目には、幸せの色は浮かんでいない。 少なくとも、僕にはそう見えた。 そして、ゆらり、と妙にぎこちない動作で立ち上がるミスト____。

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