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ガーゴイルたちとの戦い⑤

すぐさま、サンが行動にでる。 物理的な攻撃を行うのは、今まで戦闘に慣れている彼が一番適任だからだ。僕と誠、それに引田も一応は武器と呼べるようなものを携帯しているとはいえ、あくまでも護身用の簡易的な《短刀》やダイイチキュウから持ってきていたカッターナイフ(ライター)といった、れっきとした戦闘に使われるような頑丈なものではないため躊躇してしまい行動が遅れてしまった。 だが、サンはミストに危害を加える敵を仕留めるべく、れっきとした戦闘武器である弓矢を構えながら機会を慎重に伺っている。 弓の弦はぴーんと張り詰めていて、サンがほんの少しでも指を動かしただけで、瞬時にして鋭い矢が卑怯な敵の一体を容赦なくかつ的確に仕留めることが容易に想像できる。 ミストはピクリとも動かない――いや、おそらくは動くことすら叶わないのだ。 ふと、敵に抑えつけられたミストが倒れている地へと目線を動かしてみる。 そこの部分だけ、誰が見ても明らかに土が沈みヘコミがあるのだ。 それはミストを抑えこんでいる《鳥の片割れ》が相当重いということを示しているのだ――と僕は考えた。そうでなければ、ミストがうつ伏せで倒れてしまっている場所だけが、へこんでいるのは、おかしい気がする。 現に、ミストは苦しげに眉を歪めて必死でろくに動かせない体を少しでもどうにかしようと、もがいている。 ぱく、ぱくと――何かを伝えたそうに開いたり閉じたりしているミストの口は、まるで金魚のようだと思った。 (ミストは……僕らに、何かを伝えようとしている!?) ハッと我にかえり、僕は小刀を手にしながらも、スライディングさながらの勢いで滑りこむようにしてミストの方へ近付こうとした。 その時____、 【この罰当たりな羊達に……神聖なる裁きを……っ……!!】 ミストを抑えつけている【白い鳥の片割れ】が清らかな声を発したかと思うと、それからすぐに全身が神々しい光に包まれ、目を開けていられないほどの眩しさのせいで、僕は咄嗟に動きを止めてしまう。そして、それは他の二人――ミストを同じように助けたいと願っている誠と引田も同じだった。 だが、サンは違う____。 遠距離からでも攻撃可能な弓矢を構えるサンは、ミストから離れた場所にいるため眩しい光の攻撃は受けることはなく、じぃっと機会を伺っている。 「………め____め、だ……っ____」 しかしながら、自らの上から容赦なく襲いくる重さに歯を食い縛りつつ何としてでも耐えているミストの口から、僕は何らかの訴えが発せられ続けていることに気付いて胸騒ぎを覚えてしまう。 そして、僕はようやくミストが何を伝えようとしているのか理解した。 しかし、遅すぎた____。 その訴えを、後方にいるサンに告げる前に――彼は弓矢を【鳥の片割れ】に向かって的確に放ってしまったのだ。 サンは自分なりに仲間のピンチを気遣ったが ゆえの行動をとった。 けれど、それは《間違い》だったのだ。 「だ、だめ……っ____そいつを……攻撃しちゃ……だめだよ……サン……っ……!!」 ミストが顔を歪めながら必死で叫んでも勢いよく放たれた矢の動きは、止まらない。 それゆえに、サンの強い怒りが込められた矢が【片割れの白い鳥】を貫き、まるで石像のように硬い破片が四方八方に飛び散る。 そのせいで、近くにいたサンを除く僕ら三人の体へと向かって雨のように容赦なく振り注いでしまうのだった。

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