1 / 11

【天使失格】彼方。

「ん…」 どのくらい眠っていたのだろうか。 目を見開くとそこは見たことのない景色。 ふかふかのベッドから上半身を起こすとその部屋は広く、ザ・王室。 そしてそんな中ソファに座り窓の外を眺めながら紅茶を飲んでいた人物が目に入ってくる。 その人物は黒髪で長く、腰に付くくらい。 身に纏うオーラも黒く、禍々しさと煌めきを兼ね備え、とても強い。 私の視線に気がつくと微笑み、カタ…とティーカップを置いた。 「目が覚めたか」 発せられた彼の声は重低音で何だか心地よい。こんな感覚は生まれて初めてだ。 立ち上がり、私に近づいてくる。 そしてベッドサイドまでくるとベッドの端に座り長い脚を組んだ。 「体調はどうだ? 俺と目が合うなり、倒れたが」 私に向かって手を伸ばしてきて、何かされる!と思った私は思わず後ずさり距離を取った。 今気が付いたが彼の耳先は尖り、目が赤い。 額の中心の宝石のようなものも真っ赤で爪も真っ赤。 まるでーーー血のようだ。 距離を取った私を鼻で笑い、宙で止めていた手を再び私に手を伸ばしてきた。 怖くなってぎゅっと目を瞑ったが、何かが触れた感覚は頬だった。 「俺が怖いか?ーーー天使よ」 「っっ!」 そう言われて目を見開く。 忘れていた。彼は…彼は… 「ま…まお…ぅ…っ」 途切れ途切れにそういうと彼はまたふっと笑う。 「そうだな、魔王と呼ばれている。 だが、俺の名はサタンだ。 お前に馴染みがあるのはルシファーの方か?」 「う、うらぎりもの…っ!」 私の頬に触れる手をパシッと払い、睨みつける。 そう、この男はサタン。悪魔の王だ。 だが元々は天使で私達を裏切ったのだ。 なのにいきなり私の前に現れて私は気を失い…ここにいる。 どうしようか…殺される…。 底知れぬ恐怖と戦いながら彼を睨むが、目の前の魔王は余裕そうに笑っている。 「…どうして私をここに連れてきた?」 「どうして?どうしてだろうな、ミカエル。自分で考えて見てはどうだ?」 「…殺せ、私を。その為にここに連れてきたのだろう?」 私のその台詞に、突然大声で笑い始める。 何がおかしいというのだろうか。見せしめ以外に何があるというのだ。 満足するまで笑ったルシ、いやサタンが次の瞬間に放った言葉に驚愕させられる。 「ーーーお前を俺のモノにするためだ」 「は…!?」 すると突然彼は私がかけていた布団を引き剥がし、ベッドに上がってきた。 見てみると私は何も身に纏っておらず、思わず大事なところを手で隠した。 サタンが私に近づいてきてギシ…とベッドが軋む。 後ずさりするものの背中にトン、と壁が当たりもう逃げる場所などない。 ーーそうだ! 私は背中を丸め肩甲骨周りに力を込める、が、何も出ない。 「ああ、言い忘れたがお前の綺麗な翼は奪わせてもらった。 俺のモノになるなら返してやる」 「な、何を言ってるんだ!」 「天使だった時からお前のことを気に入っていた。それはお前も同じだろう? こうして力を手に入れた。その力を使ってお前を手元に置きたい。 誰も逆らうことは許さない。例えそれが…ミカエル、お前でもだ。」 有無を言わせないオーラに私は言葉が出ない。口がパクパク動くだけだ。 …そう、私とルシファーは想いあっていた。だが、それはこいつが堕天する前の話。 あの時裏切られた私は、悲しみに暮れ、もう出ないと思うほどの涙を流した。彼を恨み、許せなかった。 だが…それでも忘れられなかったのも事実。 こうして再会出来たのは天使失格だが、嬉しかった。 「お前にまた会えて嬉しい。 お前も、そう、だろう?」 「…っっ」 どうしてそんな言い方するんだろう。 どうしてそんな表情するんだろう。 …ズルい。ズルすぎる。 私は思わず唇を噛んだ。すると彼の手がスッと伸びてきてその長い指で唇をなぞられる。 「噛むな。傷が付く。 お前に傷つけるのは俺以外許さない。 例えそれがお前本人でも、な」 「ご、強引すぎる…っ」 「好きだろう?そういうの」 「…んっ!」 突然顔が近づいてきたかと思ったら強引に唇を重ねられる。まるで味わうかのように舐められ、角度を変えられる。 入り込んでくる厚い舌に口内を掻き回され、どちらのものかわからない唾液をゴクリと飲み込んだ。 久しぶりの口付けに既に身体の力は抜け、気付けばベッドに押し倒されていた。 彼が私に跨り、私の口の前に人差し指と中指を差し出した。 どうやら舐めろと言っているらしい。 おずおずと口を開くとその中に指を捻じ込まれ、話せなくなる。 「んぅ、ふぁ、っ、」 「しっかり濡らせ。じゃないと怪我するぞ?」 「ふ、ふぁい、っ…、」 言われるがまま、指に舌を絡めしっかり濡らす。その様子は自分でもだらしなくてとても他の人には見せられるものではない。 「そろそろいいか」 そういうとサタンは口から指を抜き、私の両膝を掴み開かされる。 何をされるかは分かっている。それでも、抵抗など出来ない。 彼のオーラが、私を従順にさせた。 …自分の意思だとは、認めたくないだけなのかもしれないが。 「ここは、いつから使っていない?」 「…あなたと最後にしたとき、から」 私の台詞にサタンはニヤリと満足げに笑みを浮かべ秘孔の入口を突く。 「んぁあっっ!!」 久しぶりの圧迫感に息が出来ない。 彼はそれでも容赦なくナカに指を押し入れ、ある一点を突かれた瞬間カラダがビクビクと跳ねた。 サタンがフッと笑う。 「ここか」 「あっ、だめっ、ンんんっ、」 悪い顔をしてそこばかり攻められ、頭の中は真っ白。何も考えられない。 「だめっ、も、いっちゃ、ぁっ」 「早いな。一度出すといい」 迫り来る絶頂に逆らえるはずがなく、されるがまま欲を吐き出してしまった。 ハァハァと息を整える間も無く、彼は大きくそそり勃つ雄を秘孔に押し当てる。 そして一気に私を貫いた。 「あああああっっっ!!!」 痛みと快感でおかしくなりそうだ。 彼は私を恍惚とした表情で見下ろし、空いた両手で私の胸の蕾を摘んだ。 指先で弾くと、キュウッと捻られる。 「ぃやっ、らめぇっ!」 「ここを弄るとナカが締まるな…。 好きだったもんな?」 「ちがっ、んぁあっ、…ゃ、」 否定するたびに捻られ、こねくり回され、そこはジンジンと痺れぷくりと膨れてしまっている。 そして油断していたが彼が腰を引き、次の瞬間、一気に貫かれる。 容赦ない突きにただ口を開いて喘ぐことしか出来ない。 ーーああ…彼に抱かれているんだ…。 それを身を持って感じ、受け止めることが出来る。 それだけで幸せで、もうどうでも良かった。 「…んっ、るし、ふぁ、ぁあっ、」 「…っ、ん?どうした…、?」 「ぁっ、しゅ、き、しゅきっ、ずっと、んぁっ」 「っ、くそ、持ってかれる…っ、」 先程まで余裕綽々だった表情が切羽詰まったものに変わり、ナカにいるサタンが容量を増したのが分かり嬉しくなる。 私で、感じてくれているんだ…。 私はサタンに手を伸ばし、頬に手を添える。 サタンは微笑み、私の手に擦り寄った。 …やっぱり、どんな風になっても、私はサタンのことが、ルシファーのことが…。 そう思うともう止まらなかった。 「るし、ふぁー…」 「どうした?イキそうか?」 「ねえ…服、脱いで…」 「あ?ああ」 ルシファーが身に纏っていた衣服を脱ぎ去り、裸になる。 そして私は彼を抱きしめた。 天使でなくなった彼は氷のように冷たい。 私は気にせず抱きしめた。 私の体温が少しでも移ればいい…。 そう思い、抱きしめ続けていると、ルシファーは律動を再開させる。 「うっ、ぁあっ、んんっ、るし、ふぁあっ!」 「くそっ…可愛いことしやがって…」 「あいっ、たかっ、たァっ、すき、すきぃっっ」 「…ああ、俺もだ。 ミカ、可愛い…」 互いに我を忘れて貪り合う。 会っていなかった期間を埋めるように…求め合い、愛を囁き合った。 「悪魔の王が愛を囁いていたなんて、他の奴には絶対バレたらだめだ」 とか言いながら。 何も出なくなり、やっと落ち着くと、寄り添ってベッドに入る。 「結構俺、変わっただろう?」 変わった? 中身は全然変わっていない。 …ああ、見た目か。 もともと綺麗な白髪だったのが闇のように黒くなり、耳先も尖っている。 真っ白だった翼も真っ黒に染まっていた。 なかったはずの額の宝石もあり、キラキラ光っている。 …それでも。 「…変わったけど。ルシファーはルシファーだから」 私の台詞に嬉しそうに微笑み、私の耳を甘噛みした。 「俺はお前を手放したくない。 戦うもっとお前は美しく俺を魅了してやまない」 「当たり前だ。私は守護者だぞ」 「そうだな…」 「私の翼は返してもらえるか? ないと何だか変な感じがする」 「返す。だが焦る必要は、ないだろ?使うことはない」 「お前を守るために使う」 サタンの返事が途切れ途切れになる。眠いのだろう。 私は彼の頭を撫でて彼が眠るのを見守っていた。 「…おやすみ、サタン」 それから私はサタンと人生を共にした。 彼から離れることなど、もう出来なかった。 だがサタンは私を部屋から出さなかった。 逃げることが心配だったのかもしれない。 逃げるつもりなどなかった。 ただ、サタンを守りたかったのにサタンは私を愛してくれるだけだった。 そして最後の審判の日、私は血だらけになりながら部屋を出て彼の元へ急いだ。 ぼろぼろの彼を目にした瞬間、視界が歪む。 自分が泣いているのを理解するまで時間がかかった。 サタンが私に気付き目を見開く。 戻れと叫んでいるが首を横に振る。 千切れかけている重い翼を引きづりながら彼の側へ寄る。 「…なんで、来た…」 「離れたく、ない…一緒がいい… もう、置いていかないでくれ…」 「すまなかった…もう離れたりしない…」 ぼろぼろの私をぼろぼろのサタンが抱きしめてくれる。固く抱きしめ合う。 そして2人で一緒に息を引き取ったのだった。

ともだちにシェアしよう!