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【快楽の狭間】運営
重苦しく立ち篭める雨雲に似た大きな雲。
いや、魔力が漏れ出ているとも謳われる城壁内部で淫らに狂おしく声を響かせる。
「あぁっ!も、許してっひっ、ああっ!」
涙を流し首を仰け反らせる銀髪の美しい青年。
服はあってない様なもので、既に数カ所のボタンを肌蹴れば、熱を放っている細身の身体がしっかりと味わえるのに、繋がりだけを急いたようにグリグリと腰を押し込む男にただ啼くしか出来ないのだろう。
「はっ...お前は、ここを触れば私を天まで導く天使だからな」
そう言いながら、胸の先の尖りを指で押し上げた。
「あああっ、んんっ、あ、もっと、もっとして!!!」
「痛い程の締め付けだな…ほら、もっと俺を狂わせろ」
そう言って黒髪の男がピシャリと尻を叩いたと同時に、喉を競り上げて口角から唾液を零しヒクヒクと細かい痙攣をくりかえす。
背後ではまだ、淫靡な音を響かせ、黒髪の男も髪を乱しながら腰を性急に早める。
「ひっ、あ、あ、あ、あ、も、あ、やぁ...」
声は掠れ、先端から飛び出した白濁がビシャりとシーツへ降り注ぐ。
「っ、はっ、先に出すなっって、言ってんだろ」
そう、言いながらも狂おしいくらいに腰を一捻り、ふた捻りと、回しながら片手で液体の出た先端を握りこんで包み込むと妖しく笑った。
「ほら、好きなだけ俺を飲み込めよ」
「ああっ!!!!」
鈴口に指を押し込み先端を急ピッチで上下させると狂ったように身体をうねらせ、ビクビクと痙攣を繰り返す。
「まお、う...様ァ...も、あぁ、くゆ、ん、また、くゆ...ひうっ!」
そう叫んで、ぐったりと倒れ込んだ銀髪の男の身体に引き抜いた先から体液が迸り、意識の無い身体を汚すかのように振り掛けた。
「くっ...っ、はっ...」
自分の手にこびりついた体液を既に意識を飛ばしている男の美しい顔に塗り付けた。
「逃がしはせぬぞ」
そう、一言残しソファーに掛けていたマントを掴み部屋を出れば、数人の男が群がり、身体を清めてから服を整えた。
「魔王様はこの男をいつ手放すのやら...」
「もとより奴隷、飽きれば捨てるさ」
きききっと、笑いながら醜い塊が笑った。
快楽の深みに落とされた所から覚醒すればいつもこの小悪魔たちが、自分の後処理をしている。
時には汚く罵りながら、魔王が飽きるのを待っているのだ。
奴隷の牢に入れられ、もう何ヶ月目か。
銀の美しい髪も、まだ艶やかなままではあるが時間の問題だろうと髪をひとつに纏めた。
長い黒髪の魔王と、銀髪のルキュエル、いや名前など覚えてさえ居ないだろうなと暗い牢屋の中で笑った。
毎夜誰かが呼ばれ帰らない人もいた。
そんな中ルキュエルだけが、あんなに抱かれ戻されるのは、何故かと考えていた。
あの小悪魔に聞いた時は、飽きたらきっと、捨てられる。
捨てられた残骸はあの小悪魔達の遊び道具になるのだとか。
ああ、なんと恐ろしい...
平穏に過ごしていたルキュエルは、連れ去られた日の悪夢を思い出していた。
綺麗な妻もいて、子は無かったが幸せに慎ましく生きていたはずだ。
そして人攫いの悪魔が来た日、妻を連れて行かれそうになり身代わりになった...。
男など、連れてきた所でと思っていたが魔王は思いの外雑食で並べて選ぶ時に、ルキュエルの髪を引いたのだ。
「そなた、髪が美しいな」
魔王と呼ばれた男は、目が特徴的で誰もが美しいと声を上げるほど。
その男が、夜伽の相手を選んだ...それが同性であるルキュエルだった。
女が立ち並ぶ中、選ばれたルキュエルは身を震え上がらせ、女は私ではダメなのかと声を上げる。
けれど決定は覆ること無く、醜い小悪魔に身体を隅々まで洗われた。
「ききっ、こんなガチガチじゃ抱けないだろう」
そう言うとルキュエルよりも小さな体のはずの小悪魔に四つん這いにされ尻を開かれた。
「やだ!やめろォ!俺は男だ、やめろォ」
叫んだ所で助けなど来ない。
散々中を洗われて、ぐったりとしたルキュエルが案内された先があの寝室である。
行為だけのための部屋。
愛さえない、その行為は苦痛でしかないはずだったのに、魔王の手はあまりに優しく暖かかった。
ベットに寝かされ、魔王がマントを外せば服は自然と消えていた。
あれ?と思う間にルキュエルの身体に手が這わされ嫌悪感からじたばたと暴れると、クスッと笑って頬を撫でる。
「やはり男は活きがいい」
そう言うと、中心部をギュッと握られて身体が硬直する。
「心配するな、初めては優しくしてやる」
そう言うと、小さな小瓶の蓋を開き魔王は自分の口の中へと一気に流し込んだ。
ルキュエルはただ、この危機を逃れる策を考えていたが、やはり逃げ出すことは叶わないのだと諦めのため息をついた時...
「んんんっ!?」
唇が重なり、甘いどろりとした液体を飲み込んだ。
「何をっ!」
離れてすぐ、文句を言えば薄く笑って指を鳴らした...パチン。
その音が耳鳴りのように耳にこだますると急に身体が熱を持ち出した。
今までここまで興奮したことは無いと言う程に身体は熱くなり、股間も膨れ上がってくる。
「ひっ、ぁ...なん、で...」
「お前が、私を受け入れる様に弛緩させているだけだ...快楽を強める効果も少しあるがな」
と、笑う。
ふざけるな...そんなことを考えたところで身体は熱を吐き出したいと、勝手に欲望を膨らませる。
そして魔王は、ルキュエルの服を引き裂いて指先で首筋からゆっくりと身体へ這わせていく。
「ほぅ、随分熟れているな」
「なに、を...」
胸のあたりで手を止め、魔王は舌なめずりをすると指先で、ふるふると震える胸の先を押し潰した。
「やめっ!ぅ、ぁ!」
クルクルと弄ぶように指を動かせば、ルキュエルの身体がビクビクと生きた魚のように跳ねる。
もう片方の先端に舌を伸ばす。
ぺちゃり、と音を立て舐めあげられ、両方の粒を片方は指で片方は舌で潰してはつまみ吸い上げた。
「あぁ、お前はこれが好きか」
そう言いながら胸の先を執拗に責め立てられ、あろう事かその刺激で堪り兼ねた体液を放ってしまったのだ。
「イったのか、ならば私も満足させてもらうとしよう」
そう言って、下着を剥ぎ取られ、魔王に全てを喰らい尽くされた。
その日から、奴隷として毎夜呼ばれては気を飛ばすまで突く行為が続いた。
そんな事を思い浮かべると、情けなさに身を滅ぼしたいとさえ思える。
これで妻を守れたのだと、そう言い聞かせていたある日。
魔王が、不在でルキュエルは珍しく熱を出していた。
抵抗力まで奪われたのかもしれないなと、憎しみを募らせていたはずだったのに、そんな日に限って戻るの連絡が入ったと小悪魔が来た。
風呂に容赦なく入れられて中を洗われるのはもう毎回のこととなり騒ぐ気さえ失せてしまっていた。
「ひひっ、魔王は綺麗な女でも抱いて帰ってくるんだろうに、この男に温情を掛けているとしか思えないな」
その言葉に妙に引っ掛かった。
小悪魔の言ってる事を総合的に纏めると、人はこの場所では生きるのが辛い。
魔力の中に置かれた人は大抵は病にかかったり、動けなくなる。
だが、ルキュエルはそれには当てはまらないのだ。
そして、温情とは、恐らくそれを軽減する力をルキュエルに与えているのだ。
そして今魔王が屋敷を空けて、ルキュエルは熱を出した...それを守るために帰って来るのかも知れない。
「帰ったぞ」
そう言って扉を開いた魔王、いつもであれば座って抱かれるのを待つのだが今回は身体も動かすことが出来なかった。
「やはりお前にも私は毒でしかないのだな」
そう、悲しそうに笑った。
頬を撫でれば赤みが薄れ、どんどんと熱が下がる感覚にホッとした様で、ルキュエルはありがとうを伝えた。
「お前だけは、決して失いたくないからな」
礼に返された言葉はこの上ない甘美な言葉だった。
【〜完〜】
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