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第7話
「ただいまー……」
「あ、おかえり。思ってたより早かったね」
「そりゃお前の手料理が待ってんだもん、早く帰るに決まってるよ」
「はは、それはそれは。あ、もうちょっとで出来るから先にお風呂入ってきなよ」
「おっ、助かる……もう歩き疲れてさぁ、ヘトヘトだったんだわ」
玄関のドアを開けた途端に美味しい匂いと共に佐智に出迎えられる喜び。
やっぱり良いよな、こういうの……ずっと続いて欲しい。
湯船に浸かりさっぱりとした後、一緒にご飯を食べ始める。
嬉しそうに、楽しそうに話している佐智を微笑ましく見つめる懸。
「懸……さっきからニコニコしてるけど、どうかした?」
「ん?いや、俺って幸せだなぁって噛みしめてたの」
「突然どうしたの、何か良い事でもあった?」
しみじみ話す俺を、佐智は笑いながら首を傾げる。
「佐智、聞いて欲しい事がある」
「何、外回りで何かあったの?」
一息ついて脇に置いた包みに手を伸ばす。
それらを佐智は不思議そうに見ていたが、懸が目の前で蓋を開けて見せたそれを確認すると、佐智の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちてきた。
「喧嘩した夜から随分と待たせ……って、おい、泣くなよ」
「だってそれって……」
「俺まだ何も言わせてもらってないんだけど?」
困っていて、それでいて嬉しそうな顔の懸。
泣いてはいるが、顔は笑顔で綻んでいる佐智。
どちらからともなく、手を重ねあう二人。
「それじゃぁ、言って?」
「……佐智。悪かった、随分と待たせた。これから先もずっと俺の隣で笑っていて欲しい。佐智を幸せにしたいんだ、俺が」
「うん……僕もずっと傍に居たい。懸と……幸せになりたい」
「ん……左手、出して」
懸は外回りの帰りに宝石店へと足を運んでいた。
佐智の手に映える、佐智だけの指輪を買ってきていたのだった。
それは決して高くはないけれど佐智への思いが詰まっているその指輪を、懸はそっと優しく指へと滑らせた。
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