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第1夜

夜更け。 ほとほと、と表の戸を叩く音がした。 私は慌てて、灯りを吹き消し、息をひそめた。 また音がしたが、アザミが出たのだろう。話し声がしていたが、そのうち静かになった。 「若、起きておられるのであろう」 アザミとは、私が三つの頃からの付き合いだ。宵っ張りの私が、さっきまで起きていたことなど疾うにバレていた。 「なんだった?」 「男だ。取り敢えずは追っ払った。が、また来るやもしれぬ」 「まさか。こんなところまで通う奴なんて居ないだろう」 「だと、いいがな」 欠伸を嚙み殺しながら、アザミは寝床へ戻って行った。

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