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第10夜。
走って走って。気付くとすっかり夜になっていた。
取り敢えず、追っ手の気配はない。
立ち止まった私は、その場に座り込んでしまった。
すぐにでも喉を潤さなくては。
そう思うのだが、疲れきった躰は、もういうことをきいてくれそうにない。
このまま少しやすんで、それから……
呑気な考えはすぐに途絶え、私の意識はストンと闇に呑み込まれていった。
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「おい。もし!そこな翁、生きておるか?」
誰かの声に慌てて目を開けた。
「なんじゃ、寝ておっただけか。起こしてすまなかった」
私は出来るだけ腰を曲げ、ずれている笠をかぶり直しながら、年寄りらしく見えるようゆっくり動いた。
「詫びの代わりだ」
水の入っているらしい竹筒を渡された。
「い、いただいても、……よろしいのですか?」
「構わんぞ、ささ、全部飲め」
あぁ、しみわたる……。
私は夢中で中身を飲み干した。
「ところで。ぬしは、何処へ行く途中だった?」
さて。どう答えたものやら。
私は思案した。
この男が誰の命を受けた者か、見当がつかぬ。
答えを間違ったら、命は無いかもしれない。
おののきながらも、私は頭を低くしたまま答えた
「私は主の用事で、都まで参ります途中でございます」
「ほう……そうか。では、この森を抜ける辺りまで共に来るか?」
「有難うございます。が、この老いぼれた身は、あなた様の足手まといになりましょう。お捨て置きなさいませ」
「なに、儂は戻れば良いだけの気楽な道よ。ゆるりとまいろう」
「はあ……そうでございますか」
私は用心しいしい、男について歩くことにした。
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