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第10夜、

腹が減ったとぼやく私を他所に、アザミは手早く荷造りを始めた。 「もうそこらで、やめておけ」 私の椀に蓋をするような格好で、食べることを止めさせた。 「何故だ?」 「先程の追っ手が戻る前に、ここを離れる」 「もっと山奥へひそむか」 「いや、一旦屋敷へ戻ろう」 我々は各々の荷を持って、静かに走りだした。 すると。 妙な気配が近寄って来た。 コレは。獣か……? いくらも往かぬ内に、ハッハッと、幾つもの乱れた息遣いが聞こえてきた。 狼?それとも、犬か? そうまでして、追ってくる意味に気付いた時。背筋が凍るような心地がした。 振り返って確かめる暇は無い。どちらにせよ、 追っ手がすぐそこに迫っているのは、明らかだ。 「若。二手に分かれるぞ」 「あ、あぁ、解った」 「では、先に行くぞ」 「わかった。無茶はするなよ」 「そっちこそ」   そっけない返事を返したアザミは、右の道に入ると、一気に足を速めた。 私は左の沢を慎重に渡って、木々の陰に隠れながら、走りはじめた。

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