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第10夜

翌朝早く、アザミは家へ戻った。 あとに残ったのは、私一人。 することもないので、竹細工をして、暇を潰すことにした。 暫く籠を編んでいたが、ふと思いついて、短い竹に孔を開けてみた。 一応、横笛らしい形にはなったが、吹いても全く鳴らない。 やはり、素人が俄には作れない、か…… そうこうする内に、少し腹が減ってきた。 アザミの作った山菜汁でも食べるかと立ち上がった、その時だった。 「若!」 大声と共にアザミが駆け込んできた。 「早く此方へ」 私は手を引かれるまま、裏の茂みの中で息を殺した。 ガサガサと歩き回る足音が二つ…… 「ちっ!逃げ足の速い鼠め!」 「たしかに此方へ逃げたのか?」 「あぁ兄者、間違いない!」 「……ふむ。では、この少し先の村まで行ってみるとするか」 「行くぞ、兄者」 話し合う声と足音は次第に遠ざかっていった。 どうやら、立ち去ったらしい。 私はホッとして、茂みから出た。  

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