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第44話

++++ Sub: 無題 こんにちは 大学生活はどうですか? 僕は語学学校を終え大学に通ってます。 バイトもはじめました、といっても小さなオフィスでの雑用です。 こっちでは成人式もないけれど、大分前に二十歳になりました。 知り合いにギターをもらったので時々弾いてます。相変わらず下手くそだけどね。 いつかまた 佐藤類 ++++  『いつかまた』と言いさして終わったそのメールは、聞きたかった事は何も告げずに去って行った時と同じだった。 ――会いにきてって言ったくせに、どこに行けばいいんだよ。  どこにいるとも、会いたいとも書いてない、淡々としたその文面が、いかにも類らしかった。 ――こうやって予防線を張りながら、その垣根を超えてくるのを待っているんだ。 ++++ Sub: Re: 久しぶり 俺も19になった。 大学も決まって、結局一人暮らしを始めたよ。 レストランでバイトもしてる。まかないがうまいとこ。 どこにいるの? 会いに行くから教えて。 下手くそなギター、聞きにいく。 密 ++++  他の人相手なら余程の事がない限り返さないメールも、すぐに返信した。 類からのメールは、わざと距離を詰めないようにしている様な短い文ばかり。何往復もしながらようやく居場所を教えてもらい、休みに合わせて飛行機のチケットを取った。  本当はもう恋人がいるんじゃないか、とか、最後に『会いに来て』と言った手前断れなかったんじゃないか、といろいろ考えたけれど、自分のエゴを押しとおしてでも類に会いたかった。  そうしなければ、きっともう会う事はない。  別れた時の気持ちと同じものを持ち続けているのが自分だけなのか分からないけど、会わない限り自分の気持ちにも踏ん切りがつかないのは確かだった。

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