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第4話
男を担ぎ上げる呪術師。
「せ……んせ?」
「じっとして」
猫の子でも運ぶように軽々と男を抱え大股で寝室へ向かうと、ベッドにそっと横たわらせた。
「な……にを……?」
熱っぽい唇が舌足らずになりながら問う。男の巨体を見下ろし、呪術師が上がる息を必死で整えながら答えた。
「回路が通るのがおっつかない現状をなんとかするには、体をつなげてやるのが一番手っ取り早い。」
見下ろす呪術師の呼吸の乱れは男を運んだせいではない。体をめぐり始めた新しい魔力を制御し、なんとかいなそうとしている結果だ。今にも男に噛み付いて蹂躙したい凶暴な欲求が熱量となり呪術師の目をオパールのように輝かせる。
呪術師が自分の服を乱暴に脱ぎ捨てながらもどかしそうに下唇を舐めた。細身ながら鍛えられた筋肉にうっすら汗が浮かび、部屋の薄明かりに光る。
「今、俺にもガンガン旦那の魔力が流れ込んできてますぜ。すげえ量だ……正直最後まで正気でいられる自信がねえ。なるべく優しくはするが、ひどくしちまったらすまねえ旦那」
はだけかけていた男のシャツに手をかけ一気に剥ぎ取りながら、胸を鷲掴む。
「あぁっ」
昨日も同じ様に触れられたはずなのに、呪術師の肌が触れた部分だけが灼けるように熱い。だがそれは不快ではない。内側からあふれる魔力が呪術師の指がうごく度に喜悦し、もっともっとと男の体をうねらせる。
「せ、せんせ、おれ、なんか変だぁ、ああっ」
男の胸に浮かんだ呪術師の印が、悲鳴が上がる度に明滅する。
「そのままでいい。無理せず感覚に逆らわねえでくだせえ」
両手でぐにっと男の胸肉を押し上げる。指の間にある乳首がピンと尖り、太い首が反らされた。汗の滲む額に男の黒髪がかかる。
「んっ、そんなこと言っても、どうしていいか……あっ」
呪術師の紅い舌が鎖骨をなぞり、戸惑う男の声が快感に沈む。呪術師によって敏感に育てられた乳首がもどかしくて男が思わず呪術師の手をとり先端へ導く。
恋人の可愛いおねだりに、しかし、長い指先は色づいた乳輪を人差し指と中指の腹で擦るだけだ。
時折脇腹まで範囲を広げ、むっちりした肉感を思う存分貪る。
暴走する魔力で熱を持った男の体はどんどん鋭敏になっていく。
ぽってりと肥大したそこがピリピリするほどに高まる期待に抗議の声が上がった。
「だめぇ……周りばっかり………」
「なにが駄目なんです?」
「ちゃんと、触ってぇ」
「どこを?」
焦らしながら乳首に顔を寄せ、先端スレスレで歯を合わせてカチカチ音を立てる。
このまま熟れた果実を歯で蹂躙されたら……、そう思うだけで男の腰が揺れた。
「ああっ、いじわるぅ」
「そりゃあ誤解だ。俺はこうして旦那と俺との間にきちんと回路が通じるように術を補正してるだけだぜ?」
するりと男の割れた腹筋の溝へ薬指を滑らせる。
「ひっ」
予想していなかった刺激に悲鳴が上がった。
「でも……っ、俺の弱いトコばっか、ああっ……」
「魔力の流れる経絡にそって調整してるんだ。早く楽にしてやりてえのは山々だが堪えてくれよ?」
手の平で味わい、指で犯すを繰り返す呪術師に抗議の声を上げるが、聞き入れられることはない。
いつもならヒンヤリ感じる呪術師の手が今日は熱い。男から呪術師にだけでなく、男にも呪術師の魔力が流れ込んでいるのを感じた。それは皮膚の柔らかな部分を羽根でなぞるかのように体の内側を通り、胸に浮かぶ印に向かっていく。
肉体の表面と内側を同時に責められる感覚が、男の理性をどんどん侵食していく。
「こんな、だめっ……!」
クシャクシャになったシャツをベッドから蹴り落として巨体が無意識にのけぞるのを白い手がガシリと掴み引き下ろす。その振動とシーツの摩擦ですら軽く達してしまう男。
「あンっ!」
「ほうら、逃げたらいけねえよ旦那?」
髪の間から見える耳に舌を這わせて、ワザと水音を立てる。
ぴちゃ
ぴちゃ
くちゃ
「んんっ」
とっさに目を閉じるがかえって音が内に響く。
浮き上がる腰に作業ズボンはすでに邪魔でしか無く、張り詰めた男根がくっきりと浮いていた。
苦しげに足を擦り寄せる男に気づいて呪術師が一気にズボンを剥ぐ。
ぶるん
飛び出した男のそれを目を細めて確認する呪術師。太い鈴口からは先走りの蜜があふれ、パタパタと音をたてて布に染み込んでいく。新たな刺激を期待してぴくんと揺れたそこ。だが触れることはなく、ここでようやくツンとした乳首に舌を這わせる。
「ひぃっ!」
熟しきった果実を固く尖らせた舌で弾いては周囲をじっくり舐め味わう。
「ああっ」
反対側は指でつまみコリコリ転がしてやる。以前飲んだ獣人ミルクプリンの後遺症だろう、乳頭からはうっすら甘いミルクが滲む。わずかに粘着性のある白い液体がニチニチと音を立てて男の耳を犯した。
「ああ、結局後遺症は残っちまいやしたねえ、魔力量が増加するとミルクが出ちまう。しかしここまで適合しちまうなんて、……やっぱり旦那の身体はイヤラシイ」
ちゅぱっ
唇を離すと白い液滴が男の広い胸から頬にかけて散った。
「あ……っ」
「まったく、なんて顔してやがんですか」
まるで顔面に精液をかけたような絵面に呪術師が思わず首筋にかぶりつく。犬歯が筋肉に埋まり、痛みが快楽となって男の脳髄を灼いた。
「んんっ!」
ゾクゾクと背に電流が走る。
「まだ下半身には指一本触れてねえのに、もうトロトロじゃねえか」
「せ、先生が」
「そうだな、俺の所為だ」
猫が喉を鳴らすように声を立てて笑う呪術師。
戯れのように男の乳首をキュッとつまんで、そのまま濡れる唇に口づける。
下唇を食んで、その柔らかさをたっぷり楽しんだ後にズブリと舌を差し込んだ。
急な襲撃に戸惑う舌をすくい上げ、愛を囁くように優しく撫でる。
戦慄く口腔に唾液が溢れるのをそのままに、淫靡な音を立て続ける。
じゅぷっ
くちゅくちゅ
ちゅっ
「んっ……はぁっ、んん」
「旦那、ちゃんと息継ぎして、……そう、……上手い上手い」
溺れるようにしがみ付く男の後頭部を左手で支えて、残りの手が胸を揉む。指の間で乳首を転がしながら快楽に味付けされていく肉。
顔の角度を変えて味わいながら時折強く乳首をひねれば、舌先にビクビクと感じるのは男の羞恥。
何度味わっても甘いその口づけに呪術師も一瞬我を忘れそうになったところでゆっくりと唇を開放してやる。
陶然とした目には情欲の光が宿り、唾液で光る唇は淫靡に艶めいている。
「……っはぁ……せんせぇ、あっ、だめっ胸ばっかり……ぃ」
クニクニ乳頭を潰され涙目になる。
肥大した乳首の側面を摩擦し焦らし、おもむろに先端を引っ掻けば、その度に魔力量が跳ね上がりミルクが滲む。濃厚なそのミルクは手を伝ってシーツにシミを作った。
「さて旦那、このへんで一度使い魔の命令ってのを体験してみましょうか?」
「つ、使い魔……?ぁああっ」
ぎゅむっと手を回して尻を掴み上げる呪術師。
「どうも俺としちゃあ極力乱用はしたかぁねえんだが、ま、ひとつ勉強だと思ってくれ」
ニヤッと口を歪めると、男の耳に小さく囁いた。
「『主として命ずる、達するな』」
「!!」
そのとたん、男の胎にきゅうっとした重みが加わった。混乱しつつある男の男根を呪術師は握りこむ。
「ああっ、駄目っ、そんなことしたら」
ギリギリまで高められた熱が刺激で弾けそうになる…はずが、ピークを迎えたそれが達する事はなく、暴力にも似た乱暴さで男の脳裏を灼いていく。
「な、くうっ、あああっ……どうしてぇ!」
まるで根本を紐で拘束されたかのようだ。
甘い苦痛に男が首を振り悶える。
「命令されたことは絶対服従。空を飛べと言われたら空を飛び、死ねと言われたら死ぬ。それが主と使い魔の関係だ」
説明しながら男根をしごく手。先走りの蜜でグチュグチュと性器を翻弄するが、甘い刺激が高まるばかりで一向に達することが出来ない。
「あっ、だめっ、うごかしちゃ」
「苦しいかい旦那?」
「せんせいっ、ああっ、やあぁ」
「まだ音を上げるにははやいぜ…?『主として命じる、足を開け』」
「ひぃっ」
またも囁くと、男の意志とは関係なく男の肉体が淫らに脚を開き、右の手が後孔へと伸ばされた。指がそこを開くように添えられて、怒張する男根と共に秘部が薄明かりにさらされる。
「あ、そんな……っ」
「いい眺めだ」
顎に手を添えて頷く呪術師に男が訴える。
「こんなの、やぁっ……!」
「『主として命じる、ほぐせ』」
驚きに見開かれる目。だが身体は止まらない。男の太い指がはくはくと物欲しげなそこへ沈められた。
「あああっ」
円を描くように蠢く指。
ぐちぐちという音が、次第にジュプジュプと言う水気を含むものに変わっていく。
「ふうん、内側から濡れてきた……淫の魔力属性のせいかねえ」
まじまじと見つめられながら、それでも男の指は止まらない。いつの間にか指は3本ほどにまで増え、深く浅く抉られている。
「やぁ、先生、とめてえ」
「俺は指を増やせなんて命令してませんぜ?そんなに腰を揺らせて説得力のねえ事言いなさんな」
「ああっ、だってぇ」
指では届かぬ場所が疼き、もどかしさに男の目尻に涙が浮かぶ。
無意識の内に反対の手で乳首をいじりながら自らの秘部をほぐし続ける男の痴態は普段の男からは想像もつかぬ淫乱さだ。ブルンブルンと揺れる男の男根からは先程から絶えること無く蜜液が垂れつたい、胸からはミルクが溢れ続けている。
「せんせぇ、おねがい」
「なんですかい?ちゃんと言ってごらんなせえ」
「くれよぉ、先生、先生のが欲しい……っ!ああっ」
呪術師の指が戯れのように内腿を滑り、その甘さに男が悶える。
イきたくてもイけず、がっしりした腰をくねらせ強請り懇願する様を見下ろし、呪術師がいいことを思いついたとでも言うように提案した。
「よし、じゃあ今日は自分で挿れてみましょうか?」
「えぇっ?」
「だって挿れたいんでしょう?ほら俺にまたがって、自分で上手に咥えてみなせぇ」
呪術師はベッドに腰掛け、そそり立つそれを顕にする。
その怒張は女の腕ほどもあり、どういうわけか複雑にゴツゴツと隆起しているグロテスクな代物だ。何度も胎に飲み込んだとは言え、自分で挿入したことはまだない。
男はその存在感にゴクリとつばを飲む。
ちらり、と呪術師に助けを求め視線を投げるが、呪術師はにこにこ微笑むばかりだ。
「どうしました?大体回路も落ち着いてきましたし、このまま止めますかい?」
その言葉にあわてて首をふる。この場合の『止める』はこのままの放置だと男は察していた。
以前達する寸前で同じことを言われて、実際に一晩放置された過去を思い出す。
この熟れた苦しみのまま放って置かれるくらいなら死んだほうがマシだ。
そっと呪術師にまたがり、おそるおそるその楔を花蜜溢れる蕾にあてがう。羞恥に逸らされた顔が紅く染まり、楚々とした色香が漂っていた。呪術師にいやらしい欲を見透かされそうで目を閉じ、長いまつげが薄明かりに影を作る。
「んっ……」
入り口に圧迫感を感じながらぐっと腰を降ろしていく。
ずぶ、ずぶ、と少しずつ侵入してくる肉の楔に痺れるような快感が襲った。熱を受け入れる苦しみと侵略される快感に目が回りそうだ。
「ああっ」
「そうそう、うまいぜ旦那」
「くうっ、せんせぇ……」
ジワジワ半分ほど飲み込んだだろうか、後少し、そう思った瞬間下から突き上げられる。
「ああぁんっ!!」
とたんに脳髄に稲妻のような甘美なショックが走った。今までならとっくにイッていただろうが、しかし、使い魔命令の為にそれも果たせない。
かふっ
そらされた太く靭やかな喉から声にならない悲鳴が上がった。
「そらっ、休んでる暇はねえですぜ?」
呪術師は体勢を変えてガバリとベッドへ再び男を押し倒すなり、背後から一度深く貫いた。
「ああぁっ!」
ゴリゴリと押し入ってくる肉棒に、イイトコロを一気に蹂躙され眼の前がチカチカする。
普段ならもっとゆっくりされる挿入も、たっぷり濡れてほぐされたせいで只々気持ちがいい。
「だめっ、気持ちいいトコばっかりぃっ!ああっ、ンンっ!」
ずっちゅ
ずっちゅ
ぐちゅっ
「そら、イケないまま奥まで貫かれるのはどうだい旦那?」
「あっ、あンっ、だ、だめぇっ、い、いかせ、いかせてぇっ」
男のきゅっと絞られた腰をつかんで浅く、深く、思う様に翻弄する。
キュウキュウ締め付けてくる結合部からはとめどなく蜜がこぼれて、シーツはびっしょりだ。
「ああっ、乳首ぃ、いっしょは、だめぇっ!弱いのぉっ」
ミルクの吹き出す胸の尖った果実を背後から摘んでやれば、あられもない悲鳴が楽器のように室内に響く。クニュクニュと嬲り、思う様捻り上げる。その間ももちろん腰は止まらない。
ずくっ
ぐちゅっ
ずっちゅずっちゅずっちゅ
ずくんっ
「ひぁっ!よすぎちゃうぅっ!あああっ!せんせ、せんせぇっ!おかしくなっちゃうからぁっ!」
「旦那、頼むから俺以外にはそんな可愛い声聞かせねえでくだせえよ?」
「あうっ、わかった、わかったからぁっ、もう、むりぃ、いかせてぇっ」
首を必死に振る男にやれやれとため息をつく呪術師。
「仕方がねえなあ」
ぐちゅっ!
「ひいっ」
背後からかぶさるようにして呪術師がささやく。
「『主として命じる、イけ!!』」
バチュンっ!
一際深くえぐりこむ楔。それは胎を貫いて最奥を犯した。
「ああああっ!!」
達した瞬間、男は意識を手放した。
◇
「で?結局仲直りしたんですねぇ」
翌日、様子を見に来たアグラディアは自分の持ってきた焼き菓子を食べながら応接室にいた。
肘を付き、生暖かい目が呪術師に向けられている。
「ああ、円満解決ってぇやつでさぁ」
アグラディアが机に手のひらをついて食って掛かった。
「どこが円満!?結局自分の使い魔にしちまったなんてぇ……上にはなんて報告しろっつーんですかぁ!」
「あんだけ膨大な魔力持ち、どうせ上も放っておくつもりはなかっただろう?なら俺が契約結んじまっても結局は同じってぇもんです」
「ああ……、この人確信犯だよぉ、だから僕は反対したんだ……!」
頭を抱えるアグラディアの背中をわざとらしく呪術師が擦ってやる。
「まあ、その、なんだ、今回は一つ上手いこと頼みやすよ」
「いっつもそう言って!報告書書くの誰だと思ってんの?!前回も前々回も、結局僕におしつけてきたじゃないかぁ……うう。今年度の決算予備ようやく終わったばっかりなのにぃ……」
「これでも頼りにしてるんですぜ?。ま、表向きは住み込みの弟子って事にしときやしょうか」
「あたりまえですよぉ!こんな……こんなこと……!」
頭を抱えたままのアグラディアが呻く。そこに男がやってきた。
「お茶もってきたぜー、あれ?アグラディアはなにしてるんだ?」
「若者らしく人生に迷ってるだけでさ、ほっときなせえ。それより体調はどうです?」
「ああ、快調だ。なんか前より調子が良いんだよな」
腕をぐるぐるまわす男。その顔色はとてもいい。
今までは夜呪術師が『暴走』した後は足腰も立たないほど疲労して居たはずだが、たっぷり可愛がられた翌日だと言うのに今日はさっぱりと目覚めて筋肉痛も無かった。
不思議そうに首を傾げる男を呪術師の細められた目が見つめる。
「ああ、魔力回路によって最適化された分、体力が底上げされたんでしょう。重畳重畳」
「?今日は機嫌がいいな先生」
「いや?俺はいつもどおりですぜ?」
ニコニコと煙管をくゆらせる呪術師。
対面のアグラディアはその内心を察していたが、命が惜しいので黙って男の今晩の無事を祈りながら茶を啜るだけだった。
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