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それに――。
たかが妖狐のためにわざわざ身の危険を冒してまで銃を持った相手と対峙するなんて馬鹿げている。
「…………」
やはり弓月はおかしな人間だ。
彼の腕から逃れるために少しばかり痛みが引いた四肢をきゅっと伸ばせば、雷で打たれたような鋭い痛みが全身を駆け巡る。
「キュッ!」
あまりの鋭い痛みに耐えきれず、真尋が声を上げれば、大きな手のひらが頭の上に乗った。
「あれだけ酷いことをされたんだ。まだ立つこともできぬのであろう。――であれば、もう少しこうしている方が良い」
彼の手が、ぽふぽふと真尋の頭を優しく撫でる。
「…………」
体が言うことをきいてくれないのであれば仕方がない。
真尋は腕の中から脱出するのを諦めると目を閉じ、撫でられるままに任せた。
―優しい手のぬくもり。・完―
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