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 彼といると、なぜか自分が何でもできてしまえそうな、そんな気持ちにもなった。  このあたたかな腕の中にいればいた分だけ、すべてに身を委ねてしまいそうになる。  心地がいいのに、この腕の中にいると自分がダメになってしまいそうで怖くなった。真尋が身動げば――。 「痛むか?」 『痛むか?』だって……。  自分はあやかし。  初対面で、彼は真尋が妖狐だと見抜いた。  しかし、である。  弓月は果たして自分が、『真尋』であることを知っているのだろうか?  はたまた真尋と同じ一族だと思っているのか。  それにしても改めてこうしているとやはりおかしい。  だって人間の彼と自分は明らかに異質だ。  それなのに、彼は真尋を人間と同じような存在だと考えている。  人間の怪我に比べれば、妖狐の怪我なんて大したことではない。  妖力で傷の治癒なんて簡単だ。

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