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◇優しい手のぬくもり。
いったいどれくらい歩いただろう。太陽がさんさんと降り注ぐ道中、真尋は未だ弓月の腕の中にいた。
まだ痛みはあるものの、大分引いてきている。
大体、自分はもう成人した立派なあやかしだ。そのあやかしが自分よりも若い人間に抱えられているなんて情けないばかりだ。
妖狐なのにたかが人間に頼るばかりしかできない自分が惨めで、情けなくて――。
こんなだから、いつまで経っても仲間からは爪弾きにあってばかりになるのだ。一人前の妖狐として受け入れてくれない。
あまりにも非力な自分が許せない。
苦しくて、苦しくて。とても悲しい。
けれどもおかしなことに、それとは反対な心地好さもたしかに存在していた。
弓月の腕の中は太陽の中にいるようだとも思った。
弓月の腕の中はあたたかで、腹の底から力が漲ってくる。すべてから守られているような――。
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