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第1話
出会いは真夏の夜。
盆くらい帰って来いという両親の押しに負け、そう遠くない実家に帰省中のある晩の事だった。
愛犬のチョコと散歩中。
防波堤に座ってる男が目に入る。
腕の何かを外し、海へ投げてる。
なんだ?アクセサリー?
今時、海に捨てるとか……
…………失恋?
散歩を終えて折り返してきても、男はまだ座ってる。しかも全然動かない。
まさか寝てる?あそこから落ちたら怪我じゃすまないぞ。
心配になり、近付く。
ハラハラと落ちる涙。
寂しそうな横顔。
ふと足を止めた。
…………泣いてる。
高校生位だろうか。
涙を拭う事もなく、海を見つめるその男に目を奪われる。
タイプかも……
…………胸がザワザワするのを感じた。
「大丈夫?」
声をかけると逃げるみたいに海へ泳ぎに行ってしまった。
なんとなく心配で待ってた。
戻ってきた彼を見て、ゴクリと息を飲む。
濡れた髪
長いまつ毛
細い肩と腰
赤い目元
…………まだ子供のくせになんて色気だ。
「俺んちでシャワー浴びる?」
流石にこんな子供相手に犯罪か……?
でも、こんなに好みの奴、滅多にいない。
チョコを実家に連れて帰ってシャワー貸したら、送るとかなんとか言って俺のアパートに連れ込もう。
だけど、アッサリ断られた。
しかも高校生じゃなくて同い年らしい。
「これ、俺の連絡先。
また会おうよ。電話して。」
諦められなくて渡したメモ。
でも、男はメモすら受け取らない。
…………今時、固い奴だな。
少し悔しくて
意識して欲しくて
唇に触れるか触れないか、微かなキスをした。
男の頬が赤く染まる。
照れた顔、可愛い……
…………なんて表情。
つられて赤くなってしまいそうだったけど、余裕な振りをする。
「次に会えるのを楽しみにしてる」
無理矢理、連絡先をズボンのポケットに入れ、その日は帰った。
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