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第2話
街中ですれ違った黒髪の人を掴む。
「…………何か?」
怪訝そうな顔でその人は言った。
「すみません。人違いでした。」
何やってるんだ。
こんな場所で会えるはずない。
あれから、しばらく経った。
予想してたけど、彼から全然連絡はなかった。
真面目そうだったもんな。
ナンパに付いてきそうなタイプじゃない。
でも……会いたい……
たった一度しか会ったことのない 名前も知らない彼に。
また泣いてないだろうか……
話を聞いて慰めてあげたかった……
こんな感覚は初めて。
無理矢理、連れ攫えば良かった。
こんなに考えても会う事もできない。
だから、あの日は心底驚いた。
「打ち合わせまで、あと40分だ。少し急ごう。」
「タクシー手配しますか?」
「そうだな。電車だとギリギリかもしれん。
頼んどいてくれ。」
「ハイ」
会いたいと願ってた彼が隣の部署から出てきて、目を疑う。
あまりに驚いてなんのリアクションも出来なかった。
嘘だろ……
何コレ。運命?
声をかけようとしたら、すでにいなくなってた。
彼の事が知りたい……
信じられない偶然に感謝しつつ、浮かれながら書類をまとめた。
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