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第18話

「背中も膝も痛い。」 風呂でさんざん虐めたら、歩はすげー怒ってる。 「ごめんね。歩が可愛いから、つい……」 「可愛くない!」 「…………怒んないで。歩。 今日は俺がオツマミ作るから。」 怒ってるのも可愛いけど、そろそろ笑って欲しい。歩の好きなものを作ったら、笑ってくれるかな。 「…………俺、アップルパイ食べたい。」 歩が上目遣いで見てきた。 「この時間に!?」 「うん。」 「誰が作るの!?」 「葉月。」 「俺が作んのかよ!」 「だって、俺、作れない。 前に作ってくれた時、凄い美味しかったから。」 「…………狡いぞ。歩。」 「作って?」 「もー!冷凍パイ、まだあったかな。」 ゴソゴソ、冷凍庫を探ってると、歩が声を上げて笑ってる。 「…………何、笑ってんだよ。」 「なぁ、葉月ってお兄ちゃん?」 「急に何……? 確かに妹がいるけど。」 「やっぱり!ワガママ聞くのが上手だから、そうかな……って思ってた。 ちなみに俺は弟。上にねーちゃんが二人。 一番下。」 馬鹿だな。俺がお前に尽くしちゃうのは好きだからだよ。 「末っ子かよ。そんな気がしてた…… 甘え上手め!」 でも……悪くない。 家族の話…… 少しずつ、歩の事、知っていく。 今までは恋愛=セックスだった。 もちろん、歩とヤるのは好きだけど………… 二人で飯を食ったり、テレビ見たり、くだらない話をしたり、時々、リンゴパイを作っちゃったり? 一緒にいると楽しい。 二人の時間が大事に思える。 他の誰といる時より特別な時間。 歩を好きになってから、そんな当たり前の事に気付いたんだ。

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