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第20話

信じられなくて、二人を見つめた。 騒がしい交差点。 声は全然聞こえない。 歩も俺に全く気付かない。 ………………なんで瑛人と一緒にいるんだよ。 実家って言ってたのに。 もしかして昨日も一昨日も? 今日だけじゃなかった…………? 歩は瑛人が好き。 分かってたから、一度は諦めた。 なら、なんで俺に会いに来たんだ…… 何も言わず、何度も抱かれたりして………… 瑛人とは元には戻らない、そう言ったくせに。 体中を真っ黒な感情が支配する。 『葉月。』 悔しい事に思い出てしまったのは歩の笑った顔だった。 本当はぶち壊してやりたかった。 だけど お前が俺にくれた優しい気持ちが 幸せな時間が 俺を踏みとどまらせる。 …………惚れた方が負けだ。 畜生…… 本当に好きになると何も出来ない 二人に背を向けて歩き出す。 歩…… 俺、お前と会ってから思い出したんだ。 『好き』って気持ちが温かい事。 ただ、『好き』なだけじゃ駄目だって事。

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