22 / 33
第21話
金曜日。
いつもなら、どっちかの家に泊まってたけど。
自分の気持ちを自覚してから、初めて誘わなかった。
昼飯も飲みも泊まりも。
「なぁ!今日の飲み会来ない?」
帰りがけ、上司に声をかけられた。
「あ……いや……」
「最近、付き合い悪いぞ!
もしや、彼女が出来たとか?」
「付き合ってる人なんていません。」
そうだ。
俺と歩は恋人じゃない。
そう。なんの関係もないんだ。
「なら参加すればいいじゃん」
「…………」
正直、楽しく飲む気分じゃないんだよな……
「葉月!」
声をかけられて顔を上げる。
「歩……」
会社の入口に歩がいた。
「じゃ、来れるようなら来いよ。」
上司は行ってしまった。
「…………何?」
自分でも驚いた。
冷たい声。
「きょ、今日……金曜日だし、どうするのかな、と思って…………」
俺のそっけない態度に歩は動揺してるみたいだった。
「俺、今日は飲み会。」
「…………その後は?」
「さぁ、分かんない。俺、もう行くから。」
「まっ!待てよ。葉月。」
呼び止められて振り向く。
「…………何か怒ってる?」
訳が分からず、戸惑う歩。
「別に。上司、待たせてるから」
顔も見ず短く答えた。
「飲み会、終わったらラインして。」
歩の声に答えず、背を向けて歩き出す。
………………潮時かもしれない。
ともだちにシェアしよう!