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久しぶりに会った友人達は、僕を見るなり一斉に近寄ってきた。
「結城!何やってたんだよ!ラインくらい返事しろよ~」
「具合悪いのかと思ったけど、家も知らないから見舞いも行けないしさぁ」
「また、カラオケいこうぜ。結城の可愛い歌声をそろそろ聞きたいぜ」
「つーかさ、結城はこの廃れた男子高の姫なんだから、ちゃんと来てくれないと困るよ‼」
最後の1人は何を言っているのかよくわからなかったけど、みんな僕のことを心配してくれていたみたいだ。
みんな、優しくて良い人達なんだと僕は再確認した。
1日よく考えて、結局、僕は学校に行く事にしたのだ。
サキヤに言われた言葉が1番大きかった。
通い続けられるかはわからないけど、まずは行ってみようと思った。
「結城、1時間目体育だけど、体操服持ってきた?体調は大丈夫なのか?」
「うん、ちゃんと持ってきたよ。体調も大丈夫。ありがとう。」
次の時間に向けて、僕らは体操服に着替え始めた。
僕がシャツのボタンを外し始めたとき、友人の一人が言った。
「あいつら、また来てるぜ」
「誰?」
僕は、聞き返した。
友人が相手に見えないように指をさした。
教室の外に4人くらいの生徒がいた。
「あいつら3年生のヤンキーだよ。体育の時間になるとわざわざ隣の校舎からここまで来てるんだ。」
「なんで?」
僕は理由が分からず聞いたが、周りにいた友人達は何故か唖然とした。
「お前、わかってねーのか!?あいつら結城が着替えるところを覗きに来てるんだよ!」
友人の言葉の意味がわからず暫く固まってしまい、そのあと、プッと吹き出してしまった。
「ははっ、なんでわざわざ男の着替えを見に来るのさ。」
僕にイタズラをしたあいつの事が頭をよぎったが、あいつは異常者だ。
普通の人間は僕なんかに欲情なんてするわけ無い。
何も気にせず着替えをする僕を友人達は慌てて外から見えないようにガードした。
「まったく、無自覚ってのは困ったもんだな」
「それな」
彼らは呆れたように言っていた。
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