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Side 山口陽佳 定時だ! 絶対に定時にあがるんだ! 俺の頭の中は朝からその一色だ。 今日は火曜日。 結城にダンスを教えてもらう日だ。 俺は、最初にダンスを教えてもらった日を思い出す。 結城のコロコロと変わる表情。 恥ずかしいとすぐに顔を赤らめたり、 ちょっとからかうとムスッとしたり、 ダンスを教えるときは真剣な顔をする そして、別れ際の可愛らしい笑顔。 帰りの車の中で1人ニヤニヤしてしまった。 気持ちワリィな俺。とか思ったけど、あの日はニヤニヤが止まらなかった。 ようやく、定時を知らせるチャイムが鳴った。 「山口先生、今日一杯どうですか?」 席を立とうとする俺を後輩が誘ってきた。 それどころではない! 「わりぃ!今日はパスだ!」 「えぇ!?珍しい!今まで来なかった事ないのに!」 後輩は心底驚いたようだ。 「今日は予定があってな」 「えー、行きましょうよ~。デートですかぁ!?」 後輩は引き下がる。 面倒くせぇな! 結城を待たせてんのに! 「デートじゃねぇよ。じゃあな、おつかれ!」 「ドイツビールが上手いお店予約しちゃってますよ!?」 「俺は、ビールは国産派だバカやろう!」 そう言い放って、結城の待つ教室へ向かった。 。

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