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「僕、ケーキ屋さんでバイトしてて、そこのクッキーなんです。おいしいですよ」
手作りではなかったようだ。
でも、わざわざクッキーを買って来てくれたことが純粋に嬉しかった。
「さんきゅー、明日のおやつの時間にでも食うよ」
「おやつの時間なんて、あるんですか?」
「あぁ。5時間目と6時間目の間の10分間の休憩が俺のおやつの時間だ」
そう言うと、空がクスっと笑う。
「何笑ってんだ?」
「いや、なんか、先生がおやつの時間って言うのがなんか似合わなくて、つい」
「なんだとぉ~」
俺は、片手で結城の脇腹をつついた。
「や、ちょっと、運転中にふざけると危ないですよ」
くすぐったかったのか空が身体をよじる。
「似合わないって、からかったお返しだ」
「そんなこと言ったら、先生だって僕の事、何回もからかうじゃないですか」
そんな事を言い合いながら、俺らは笑った。
結城の笑顔は可愛かった。
笑ったときに出来るえくぼと小さく尖った犬歯が、結城の可愛さに拍車をかける。
「結城、もっと笑った方がいいぜ。笑う門にはなんか来るって言うだろ?」
「笑う門には福来たる、ですよ」
「そうそれ」
「先生なのにこれ知らないのって、マズくないですか?」
「俺は体育教師だからいーんだよ」
俺は、今度は結城の脇腹を揉んでみた。
めちゃくちゃ柔らけーな。
揉み心地最高すぎるわ。
「や、やだ、せんせ…っ、ちゃんと運転してくださいよ」
空は、俺の手から一生懸命逃げようとしていた。
なんか、俺の中のドSが目覚めてしまいそうだった。
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