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身体を隅々まで舐められた。
首も胸も脇もお腹も脇腹もおへそも。
唾液でべちょべちょにされた。
怖くて恥ずかしくて悔しくて、流した僕の涙すらも舐めてきた。
「あぁ、空くんの身体はどこも甘くて美味しいねぇ、涙はしょっぱいけどねぇ」
そういって男は顔を下に下げていった。
「そろそろ、ここを弄らせてもらうよ」
そういって、僕のベルトをカチャカチャと外し始めた。
今がチャンスだと思った。
僕は、1番近くのカメラの三脚に手を伸ばし、掴んだ。
そして、それを思いっきり男の後頭部に振り下ろした。
「ぐあ"っ!」
男は後頭部を抑えて悶絶した。
そいつが生きてる事と血が出ていない事だけ確認すると、脱がされた服をまとめて、走って部屋を出た。
雨の中、脇目も振らず走った。
怖くて怖くて、少しでも遠くへ逃げたくて、ただひたすら夢中で走った。
気付けば、ストリート仲間達と集まる駐車場の近くに来ていた。
みんなに会いたい。
でも、いなかった。
当然か。雨だもんね…
僕は小道の端の方に座り込んだ。
忘れかけていたのに。
最近、楽しかったから
これからも楽しい日が続くんだって思っていた。
僕にも、そんな日々が許されるんだって、思いたかった。
僕は、雨の中、両手で肩を抱いた。
もうあんな思いしたくない。
先生…
あの大きな手で、また僕の頭を撫でて、「大丈夫だよ」って言ってほしい。
助けて、先生…っ
僕の頬を雨と涙が濡らした。
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