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第5話
人の気も知らないで、吉田は晩御飯を一緒に食べたあと、帰る事なくオレの部屋に泊まった。
前は、セミダブルのベッドの上で窮屈そうにくっついて寝たが、流石に今夜は気持ちが持たない。きっとオレの「好き」がダダ漏れてしまいそうで、とにかく離れて寝なくては、と思った。
ベッドの横に寝袋を置く。
客用の布団なんて家には無くて、大抵友達とはベッドで寝るし、夏は床にタオルケットを敷いただけでごろ寝。
案の定、吉田は今夜にかぎって寝袋を持ち出したオレを変な目で見る。
「なに?!これはキャンプの練習かなんか?こんなの持ってたんだ?!」
「・・・いいよ、オレが使うから。吉田はベッドで寝ろ。」
「え?・・・なんで?!いっつもベッドで寝るじゃん。寒いんだしくっついて寝ようぜ。」
「・・ヤだよ、窮屈なんだ。お前と寝るよりこっちで寝る方がいい。」
そういうと寝袋のファスナーを開ける。
「なあ、大村・・・。なんか怒ってるの?今日はずっと機嫌悪そうだけど・・・。」
その言葉を聞いて、俺はカチンとくる。
吉田が悪い訳じゃないが、自分自身のヘタレ加減にウンザリしているんだ。
同性の親友を今までとは違う意味で好きになって、女の子に対しての好きって気持ちが軽いものに感じた。アレは、単に周りに合わせていただけなのか?!
高校の時の彼女は何だったんだ?!
「機嫌が悪い?!・・・オレが?・・・まさか。」
「アレか・・・。ひょっとして俺の絆創膏が気に入らない、とか?!」
「はあ??!・・・なんでだよ。」
「やきもち、だろ。自分には痕を付けてくれる女がいないもんだから。」
「・・・・・」
- そっちのヤキモチか・・・・。
「別に・・・、そんなのつけて欲しくないし。全然羨ましくないからな!」
「ま、いいや・・・。歯磨こうっと!」
吉田は、勝手知ったるうちの洗面所で、普通に顔を洗い出す。
オレも隣に行くと、同じように洗った。
こんなに距離は近いのに、心は近づけなくて。追えばきっと、手の届かない所に行ってしまう。この気持ちは封印しなければ・・・。
・・・・・と、思っていたのに。
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