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第6話
「お前、俺の事好きじゃん。俺も好きだ・・・。」
突然の吉田の言葉で、オレの心の中を見透かされたのかと思った。
何を言い出すんだよ。オレはそんな言葉、絶対に言えないってのに・・・。
どうしてそうも簡単に、「好き」って言葉を同じ男のオレに言えるんだ?!
吉田はこういう奴だった。
出会った時から馴れ馴れしくて、なんだか訳が分からないまま、居眠りの時は手を掴んでくれと言われ、オレは実行してやった。
「バカな事ばっか言ってないで、もう寝るから!!お休み」
そういうと、洗面所を後にしてさっさと寝袋に潜り込む。
しばらくぶりに使ってみると、案外居心地がいい。
オレの冷えた身体を包み込んでくれるみたいで、これなら吉田の気配も感じずに眠れそう。しいて言うなら、床にもう一枚布団があれば良かったんだけど。
フローリングに直に寝るのは、ちょっとだけ痛いかな・・・。
- まあ、いいや。今夜だけのガマン。
「洗面所の電気消したよ~。」
「おう、サンキュ。」
吉田は、部屋に戻ってくると、じっとオレを見る。
「なあ、さっきの話。俺、ここに住んでもいいだろ?!ちゃんと部屋代は半分出すし、光熱費も食事代も。」
そう言いながら上から見下ろされ、いい気分じゃなかった。
「・・・まだ言ってる・・・。お前、彼女がいるんだろ?同棲でも何でもすりゃあいいじゃん。オレだって女の子連れ込みたい。・・・だから、だめ!」
本心は違っていた。でも、ここでオレの気持ちをいう訳にはいかない。
見た事もない彼女に嫉妬してるんだ、オレ。
「もう、この話は止めよう。オレは吉田とは暮らさないから。今まで通り、たまに泊まりに来るんなら、ちゃんと布団を用意しておく。だから・・・。」
それだけ言うと、無性に悲しくなった。
女々しい・・・。
絶対に泊まりに来るなって言えない・・・。
本当は、今日を最後にした方がいいんだ。そうしたら、きっと諦められる。
学校でしか会わなければ。
「大村、何言ってんの?なんで俺が女と同棲しなきゃならないんだ?」
「だって・・・、その、絆創膏の・・・・女が、」
「彼女なんかじゃないよ。一回遊んだだけだし・・・。大村の事気に入ってるみたいだったからさあ・・・、ちょっとムカついて。」
・・・何を言ってる?オレの事を気に入ってる?・・・・その女の子が?
「あのさあ、意味わかんない。いいからもう寝よ。明日早いんだからさあ。」
頭の片隅に、ものすご~く引っかかる事があるんだけど、今夜はそっとしておこう。明日の朝になったら、きっと忘れているはずだ。
そう、オレは完全に逃げていた。頭の中がぐちゃぐちゃしてきて、膿んでしまいそう。
このままじゃ何を言い出すか分からない。とにかく明日。明日になれば・・・・と思った。
じっと、床に寝るオレを見降ろしながら、吉田が口を開く。
「寝袋、マジでウケる・・・。」と。
その顔は、なんだかいつもと違っていて・・・・・。
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