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僕は王子様になりたい。
Side:羊谷 明昌
「っち。逆探知できなかったっ!」
僕が機械をもってくるころには、先輩の電話は切られていた。
口の中は殴られたときに歯が当たって内側が切れたし、お腹は殴られていたいけど、それよりも先輩のあの顔だ。
僕のことを避けずんでいた。僕のことを軽蔑していた。
はっきりいって、あの顔で『気持ち悪い』とか言われながら手コキされたい気持ちが全くないわけではない。してもらいたいぐらいだ。
だけど、先輩が僕を軽蔑している。
恋人として僕に微笑んでくれない。
そう思うと胸が締め付けられた。
「……ごめんね、可愛い弟たち。お兄ちゃんは帰ってこないかもしれないんだ」
お詫びにステーキ丼を三人に買って帰ったら、嬉しそうに食べてる。
可愛い。僕も餌付けから入ればよかった。
でも、先輩の無防備な顔を見ると、襲わずにはいられないんだよ。
どうしても、理性が本能に負けちゃうんだ。
「なあ、めいしょう、風呂があったまらない」
「えー……ボイラーの故障かな? 待ってて」
弟くんたちを残し、庭に向かう。
すると、シャワーの蛇口をひねってもいつまでたっても水しか出てこない。
「ボイラーが古いって言ってたよねえ」
裏を見ると、むわっと広がる熱気が漂っている。
ボイラーは動いているということはもう少し待つか、一日中稼働させていたらお湯が出るんじゃないかな。
しばらく稼働させたまま様子を見ることにした。
「お風呂、今日は銭湯にいく?」
「おーいく!」
「すぐたべるからまってて」
「ひさしぶりだあ」
三人は銭湯という言葉に嬉しそうだったのでほっと胸をなでおろした。
……先輩が帰ってくるまで僕がこの三人のお世話をして、少しでも許してもらえるようにしたい。
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