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第155話
肩を押すと、つつーっと明昌の口から俺の胸に糸が引く。
最悪。泣いてない。涎かよ。
「いやん。やっぱ、抱きたい。抱いていい? 抱かせて」
「お前なあ」
「なんで、嫌なの? 俺が先輩以外の男と、エッチなことしたら駄目なの?」
「……よくわからん。だが、嫌だ」
そういうと、涎を垂らした顔で抱き着こうとしてきた。
やめてくれ。本当にやめてくれ。
シャツを洗い替え持ってないから、困る。
「先輩、僕のために樹木寺さんとの関係を経ってくれてるの、すっごく嬉しいです」
「なんで知ってんだよ」
「今の樹木寺さんと先輩の会話から知りました」
名探偵かよ。怖いわ。
しかも抱き着く力、半端ない。
「本当は、俺、先輩のこと性欲だけで見てる部分いっぱいあって、なのに自分も死ぬかもしれないのに火事のなか、先輩の好きになってもらうために頑張る自分が気持ち悪くって、でも先輩のことがどうしても好きで、自分でもどうしていいかよくわからないんです」
「そうか」
「だから、先輩が僕のことを考えて行動してくれてるの、すっごく嬉しいです。好きです」
「……それは、知らん」
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