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二階の廊下を、夜空を丸く切り裂き淡く灯る満月が、浮かんでいる。
榛葉を俺の腕の中に捉えて、一ヶ月が経過したことをあの満月が訴えている。
あの平和ボケした榛葉とは考え方や価値観が違えど、向こうが諦めて口を閉ざしたり、目を反らしたり逃げたり。
まだ捉えたけれど、力を弱めれば逃げてしまいそうなバランスの下だ。
榛葉を本当に手に入れるには、やはりあの佐之助が邪魔だ。
消すしかないな。
「あ」
「……なんだ」
榛葉を追い詰めつつ佐之助も消す方法を考えていた時だった。
二階の窓から、菊池が何かを見て、間抜けな声を上げた。
「狼の巣に迷い込んだ猫ちゃん? いやチワワ?」
「は?」
「駐車場に寒田様の車が留まっていますよ」
「寒田の車が……!?」
心の中で盛大に舌打ちをしてしまった。
寒田の車ということは――間違いなく預けたはずの榛葉がいる。
まだ会わせては、いや今後会うのは避ける必要があるやつの本拠地になぜ飛び込んでくるんだ。
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