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Side:愛沢 榛葉 喉が渇いてカラカラだった俺に、立花さんが水を口移しで飲ませてくれた。 怖いと言ったら、殴られるかもとかもっと酷いことをされるかと思ったら。彼は戸惑った。 自分で自分がしていることに、迷いを見せた。 彼は、俺を喜ばせる方法を知らないだけだと、寒田さんが言っていたけれど、本当にそうなんだと思う。 自分以外の他人の気持ちを知ろうともしない、興味もない、ちょっとだけ可哀想に思えた。 そんな人が、『榛葉が良かった』と言っていた意味を、俺は熱で朦朧としていた頭で受け止めたけれど上手く理解が出来なかった。 おれ『で』いいんじゃなくて、俺『が』いいと言った。 もう少し貴方の気持ちを見せてくれたら嬉しい。 恐怖で俺を支配しないで。 「榛葉、起きた?」 「?」 目を開けると、汗でパジャマが身体に貼りついて気持ち悪かった。 けれど、身体のだるさとか頭痛が治まっていた。 「お粥作ったから食べて。スープもあるよ。それに、プリンも買った。これは社長の大好物で」 フリフリのエプロンを付けた美しい顔のこの男の人は確か。 「寒田さんの秘書さんですよね?」 「はい。名前は長いので、リューでお願いします」 「どうしてここに」 立花さんの家……だよね? 当たりを見渡すと、俺の部屋だった。隅にゆかりさんの打掛が飾られている。 「社長が貴方の面倒を頼むと僕に言ったから僕、頑張ってます。宜しくお願いしますね。綺麗な方だから、モデルとして育てたいのかもしれません」 にこにことリューさんは笑うとお粥をフーフーと冷ましてくれだした。 そんなことまでして頂く訳にもいかず、飛び起きるとくらりと眩暈がした。

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