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「わ、駄目ですよ、急に起きたら。二日も寝込んでいたんですから」 「二日?」 「そうです、二日。一応、点滴は打って貰ったからぐんぐんと良くなりましたが、急に起きたら駄目ですよ。さ、食べたらパジャマも着替えましょう」 大きな零れそうな瞳を滲ませて笑う。 寒田さんから頼まれたという使命感でキラキラと輝いているように見える。 「あの、その、他の人は?」 「寒田さんは、RAIYAのプロモロケに参加。三日だけロスに行ってます。――君のボスは知りませんよ。でも、色々と貴方に伝えるように言われてます」 「すいません。寒田さんの秘書なのに俺なんかのために」 お粥を受け取ると、程良い温かさで――不意に横で眠っていた立花さんを思い出す。 寝込んだ俺に、どう接して良いか分からずただただ抱き締めてくれたあの温もりに。 「俺なんかの為にって、すっごい嫌いな言葉です。君みたいに素敵な人はとくに言ってはいけない言葉だよ」 「俺が素敵? あはは。俺が?」 聞き間違えか、言い間違えか、真剣な顔で言うリューさんに間違えてるよと訂正を上手く言えなくて笑って誤魔化した。 「素敵ですよ。貴方はもっと自信を持つべきだし、それを持っても良いと思う」 照れもせず、笑いもせず、リューさんは表情も変えずのそう言うので、どう反応して良いのか、きょろきょろ戸惑う。 「『良い人』のふりか、本当に馬鹿な良い人なのかわからないけれど、 それって全く自分が不幸になってたら意味がありません。もしーー」 漸くちょっとだけ戸惑うように目を伏せたあと、すぐに真っ直ぐに俺を見た。 「もし、君を本当に好きな人がいても、君が『良い人』を演じると、幸せにできなくてマイナスにいくかもしれない。例えば、立花社長?」 「立花さん?」 「まあ、あの人は自分の考えを押し付けて、自分の思うように事が運ばなかったら力づくか権力を使いそうですね」

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