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第194話
『会いたかったよ、俺の榛葉』
身体中にねっとりと絡みつくような、声。
その声に首を絞められて息も吸えなくて、無我夢中で暴れた。
逃げなくては、捕まったらいけない。
暴れて転がるように逃げると、後ろには拳銃を持った彼がにたりと笑っていた。
恐怖で叫ぶ。大声で何度も何度も声にならない悲鳴を上げる。
怖い。もう生きていないはずなのに、なんで彼が此処に居て、俺を追いかけてるの。その拳銃は何処から――。
「榛葉」
怖い。怖い。怖い――。
「大丈夫だ。俺がお前の怖いモノを全て取り除いてやる」
ふわっと立花さんの香水の匂いと共に抱きしめられた。
落ちつけ、と立花さんが囁く。夢だ、お前は夢を見ているんだと。
夢の中の立花さんは、格子の匂いさえさせて力強く俺を抱きしめてくれながら優しい。
俺が落ち付いて息を整えていると、まるで恋人の様な甘い口づけをくれた。
そうだ。
今は、もう俺と立花さんの間には、脅迫もないし契約も無いはずだ。
なのに、こうして一緒に居て抱き会うならば、俺達はもう、
恋人なのかな?
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