273 / 348
第274話
ヘアカットの依頼:立花優征(73)
『榛葉君? 笑ってますか』
電話の向こうの菊池さんが不思議そうに言うので、自分が笑っているのを気づいてしまった。
「だって、だって、立花さん、俺が在宅介護の方の出張美容師って知っているからか、年齢詐称してます!」
『へー、何歳ですか』
「73歳ですってっ」
『きっちりの数字じゃない辺り、小賢しいですね』
菊池さんの発言に、またお腹を抱えて笑ってしまった。
先輩が待って居なかったら、床に転がって笑っていたかもしれない。
『太陽の様に笑っているんでしょうね。私まで逢いたくなりましたよ』
「菊池さん」
『社長も変わっちゃってびっくりですよ。慈善事業まで始めちゃって。老人ホームの建物の修繕やらボランティアの派遣とか、あの人が利益にならないことをするんですよ。そろそろこの世の終わりかもしれませんね』
ともだちにシェアしよう!