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第295話
「今、幸せなのは、貴方やゆかりさんがいたからです。だから、今度は、立花さんを幸せにしてもいいですか」
自分の話になったり、ゆかりさんのフリをしたり、境界線も無く曖昧な俺の話に、佐之助さんは優しく頷いている。
多分、もう俺がゆかりさんに見えているだけで、それだけできっと彼は許されているんじゃないかな。
「幸せになってくれ。姐さん。今度こそ、二度と泣かされないように、幸せになってください」
佐之助さんは、俺にそう言った後、立花さんを見た。
「おい、あんた。もっとこっち」
手招きされ、不機嫌を隠しもせずに立花さんが、それでも近づいていく。
そして佐之助さんと睨みあった。
「本当に姐さんを幸せにする気はあるのか」
「……お前に宣言などするつもりはないが、――当然だ」
そして、立花さんは俺を見た。不本意だと、怒りを露わにして。
「お前に再会したら一番に言うつもりだったのに、なぜこの死にかけに言わなければいけないんだ」
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