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第294話

「私の旦那さんのこと?」 「そうです。貴方が兄を愛しているのに、兄は別腹に子供宿しやがって、貴方が此処でどんなにお辛かったか。俺は貴方を守りたかったが、傷を慰めることは下手で。結局花を植えることしか分からなかった」 「庭園ですね。素敵な薔薇の通り道でしたよ」 佐之助さんは俺を通して、優しかったゆかりさんを見ている。 でも、それでいい。 最期に、この人も静かに眠らせてあげたいから。 「貴方の気持ちは届いていましたし、俺も優征さんも今は、ゆかりさんのご縁のお陰で幸せなんですよ」 俺は、扉の前で不服そうに立っている立花さんに手招きした。 「苦しいだけじゃなかったのは、佐之助が居たから。あの人が居たから」 「姐さん」 「そして、ゆかりさんが俺達にお互いの存在を――教えてくれたからなんです」 立花さんを疎む必要はない。 彼がいなければ、ゆかりさんは後悔を払拭できなかったんだから。

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