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エピローグ()
「愛沢榛葉さん、宅急便です」
一階の管理室から連絡があった。
訪問美容師している担当のおばあちゃん達から段ボールいっぱいの――。
「優征、8箱も蜜柑が届いちゃったよー」
廊下の蜜柑に悲鳴を上げながら部屋へ入ると、人間を駄目にするソファの様に、炬燵で駄目な大人が二人、黙々と蜜柑を食べていた。
菊池さんと優征が正面で蜜柑を食べながらだらだらとしている。
「秘め初めっていうんですかね、姫はじめ?」
「榛葉なら姫初めだろ」
「で、姫初めはいかがでしたか?」
「体制が三パターンしかできない。騎乗位ばかりは厭きるが、炬燵に潜ってやってみたら背中が火傷してな」
「あれま。大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないから、姫初めを延長したい。一月いっぱい休もうかな」
「やーめーてーー!」
二人の、最早ツッコミが間に合わないであろう話に、俺は追加の蜜柑を籠に入れてテーブルに割って入る。
「あの、蜜柑が八箱も届いたから仕事場で配って下さいよ」
「ヤクザ顔負けの屈強なあいつらが可愛く蜜柑食べるのか」
「それ、嫌ですよねー」
「じゃあ、二人で八箱、腐らせずに食べて下さいね!」
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