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第10話

「いいのか。俺は、君を愛しても、いいのか」  耳元で吐き出される今まで溜まっていた澱のような言葉を拾い上げ、尊は何度も頷いた。 「当たり前、でしょ。だから、いっぱい、愛して。二人ならさ、守れるよ」  ――だって、俺があんたを守るから。  きっと動けない奥寺の代わりに尊は懸命に腰を振る。セックスの快楽は罪じゃなく、尊に幸せをくれるものだと、伝えたかった。 「ん、んっ」 「たける」  声のほとんど聞こえない囁きをこぼして奥寺が尊の口を塞いだ。舌を吸われ、奥寺の口の中でもみくちゃにされて頭がくらくらする。腰を抱いている奥寺の手が、もう震えていなかった。そのまま力任せに揺さぶられ、中を抉られて苦しさと快さで声が殺せなくなる。 「あっ、ああっ、や、も、っと、して」 「っ、尊君っ」 「やっ、呼び捨て、さっきみたいに、して」 「尊、たけるっ!」  一層深く抉られて震えていた尊のものが先に爆ぜた。それにつられるように奥寺が息を吐いて唸る。ゴム越しでも感じる熱さが嬉しかった。 「あっ、奥寺、さん、好き、俺、あんたが、凄い好き」  子供のように首にすがりついて何度もうわごとのように繰り返す尊を、奥寺は強く強く抱きしめてくる。 「ありがとう、尊」  何かをふっ切ったような奥寺の声を聞きながら、尊は満ち足りた気分で意識を手放した。

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