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第1話
EP.1
『俺のキモチ』
★★★★★★★★★★★★★★
『白井〜!
白井幸之助 〜っ!!!』
今日もオフィスに響き渡る怒号。
『何でしょう金森課長?』
『何でしょう、じゃないでしょ…この書類また間違ってる…。
誤字も酷いし数字が全部1桁足りない。
頼むよ幸之助…どうやったらこんな間違いが出来るんだ。』
頭を抱える金森課長と、またか…と特に気にも留めない部署の皆さん。
あ、俺またやっちゃいましたか。
頭をガシガシ掻きながら課長のデスクまで行く。
『すんません課長~っ。
俺またやっちゃいましたぁ~あはっ♡』
『あはっ♡じゃないってば。
もうマジ勘弁して…。
部長に言い訳する俺の立場も少し考えて…お願いほんと…』
『はいっ!
気を付けますっ♡』
『そのセリフ、もう100万回くらい聞いたから。
残って今日中に全部直してってね。』
『はいっ!お任せを!』
『任せてたらこうなったんでしょ?
ほんと頼むよ~ねっねっ?』
泣きそうな顔の金森課長から書類を受け取ると、クスクス笑ってる女子社員の間をすり抜けて自分の席に戻る。
うげっ!
すんごい量あるじゃん!!!
今日はいつ帰れるのぉ~っ?!
自分でやっときながらガックリと項垂れる俺。
はああぁ~…
大きく溜息ひとつ。
俺は白井幸之助 。
地方のふつーの大学を卒業して。
何の間違いか自社ビルにオフィスを構える一部上場のIT関連大企業に就職出来てしまった。
中学からずっとつるんでる親友とノリで受けただけだったのになんでか2人とも採用されちゃったんだよね。
でもやっぱり中身が無い俺がそんなところでバリバリ仕事できる訳なんてなくて…明るさだけが取り柄の部署のお荷物社員。
入社して2年目だっていうのにここ第二営業部でも毎日のように何かしらミスをしては怒られてて、始末書の数だけなら歴代トップの実力の持ち主だ。
186cmの長身に超イケメンの顔。
高校時代はバンドも齧ってたしスポーツもひと通りなんでもこなす。
自分で言うのもなんだけどこれだけ条件が揃ったいい男なのに、なーんか残念とか言われて彼女も出来やしない。
(出来ても同じ理由で長続きしない)
当然会社でも顔だけ男としてエリート志向の女子社員からは恋愛対象外にされている。
俺の人生、運がいいのか悪いのか…未だにさっぱりわかんないよ。
山盛りの書類を手に溜息をついていると、ふっと誰かの手がそれを取り上げた。
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