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【デート編】第27話
【見夏サイド】
「授業の予習、飲み会……うわぁ……来月地獄だぁ……」
職員室で一人ぐったりと机に伏ると、秋斗がひょいっと手に持っていたカレンダーを奪う。
さすがに秋斗もこのスケジュールには顔をしかめ、すっとカレンダーを戻す。
「お前、無理に飲み会なんか参加しなくてもいいんだぞ?」
「……うーん」
「まぁ……理人は断るタイプじゃないだろうな……」
来週末から夏休み。
もちろん教師の俺はちゃっかり仕事。
けどゆっくり休む暇が無いのが現実で、もしかしたら北城とデートする日が、一番遊べる日なのかもしれない。
「来週末にハートマーク付けてるのはなんでだ?」
「……デート」
「……進展早くね?」
そう、セックス以外で彼と外で過ごすのは、初めて。
だから無性にあれこれ考えてしまって、それはもう色々と、手につかなくなっている。
……恋人だから余計に。
「運転は理人が?」
「さすがに電車とかだとバレるかもだし……秋斗はどうしてる?」
「県外とか遠い時は変装させて新幹線。
後は全部車だな」
ふと、察したのは秋斗は「あー……そっか」と呟く。
「お前が運転する側だとどうしても年上感が出るな……」
年上感というか、ちょっとした距離感。
高校生ということを連想させてしまう。
俺が抱かれる側だから、どうにもそこをちょっと、意識してしまうな……。
千草先生は夕陽とどうしてるんだろ。
でも一日中一緒みたいなものだし、もしかしたらデートしてないのかも。
うーん…教師と教え子のデートって……難しい……。
「──…は?デートしてるけど?」
「……デスヨネー」
放課後、夕陽に相談しに保健室。
ズバッと言われた一言は結構突き刺さり、思わず項垂れる。
「場所なら多分あの茶髪バカが決めるから安心してなよ。
それとも行きたい場所でもあんの?」
「行きたい場所……」
北城とならどこにでも行きたい……なんて、我ながらに考えると照れる。
でも1つだけ行くとしたら……ちょっとだけ思いつくところがあるのも事実。
「つまんないって思われるかもしれないけど……海行きたい」
「……意外」
「ちょっと、色々とあって」
前北城としたゲームのエンディングに、恋人となった主人公とヒロインが、海に行くシーンがあった。
そのシーンは比較的ロマンチックで、海に行きたいとは、考えたことがある。
この時期の海は格別に綺麗だから、写真撮りたい。
そして思いっきり泳ぎたいなって……。
自己満足じゃなくて、二人でしたい……なんてな。
「海なら隣街が近いけど、俺穴場知ってるから教えてあげる」
「……夕陽が優しい!」
「今気づくの……?」
夕陽がぽちぽと携帯を操作し、「ほら」と画面を俺に向ける。
それは見たこともないような綺麗なオーシャンビューで、一瞬に虜にさせる。
場所は隣の県だが遠いという程ではなく、駅も近い、立地は抜群に良い。
行きたい……これは生で見てみたい。
「あんまり人がいないからおすすめ。
まあ田舎にあるからね」
「……」
食い入るように見てたのか、夕陽は何かを察して俺にその海の画像を送ってくれた。
自分の中に何かが決まったように頷く。
「……北城に伝えてきなよ、先生」
「ああ……言ってくる」
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