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【デート編】第26話
* * *
自分で作った朝食を食べて、「行ってきます」と誰もいない廊下に言い放って家を出る。
たとえ愛されていなくても、それだけはしておこうと思った。
……母のぶんまで朝食を作ったものの、きっと食べてくれないだろう、捨てるに決まってる。
いや、今は家のことを考えるのをやめよう。
(せっかく今日は見夏先生の授業があるんだし、張り切らなきゃ……)
しかし張り切りすぎたのか予想以上にお腹が空いてしまい、見夏先生の授業中はほぼ俺の腹の虫がたくさん鳴いた。
「……お腹の音ってどうやったら鳴らなくなるんだろうね~。
それはそうと、はい、百田くんの分」
昼休み。
立ち入り禁止の屋上に逞と俺、二人きり。
逞特製手作り弁当を受けとると、俺は申し訳ないと思いながらも、ありがとうと告げる。
……これは誰にも言えない隠し事だ。
朝食・夕食の食費はかなり莫大で、正直昼食まで作れるか、不安なところがある。
だから逞にこうやって作って貰って、二人で食べるのが日課。
この習慣がバレてしまったら、勘づかれるかもしれないし、からかわれる可能性がある。
一度相馬先生にバレそうになったときは焦った。
二人の秘密は……絶対なんだ。
「なんかいつもごめん……。
弁当めちゃくちゃおいしい」
「俺が作りたいだけだから気にしないでよ。
それに入れるおかず考えるのだって楽しいよ」
逞が作ってきたスフレオムレツ……口の中で溶けるように甘さが広がる。
俺にはできないことだ、きっと仁科夫婦の料理の上手さを、引き継いだのだろう。
ぺろりと完食すると、嬉しそうに逞は微笑む。
「ごちそうさま」
「うん。明日も楽しみにしててね!」
……本当に、なんて逞は優しいんだろう。
相馬先生が惚れるの、よく分かる気がする。
友達で良かったと思える人なんて、本当に、本当に久々に出会えた──…。
ありがとう。
本当にありがとう、逞。
「あ、そうだ。
リサーチ……俺、何聞けばいいかな?」
そういえば、見夏先生のデートのリサーチ、今日は逞の担当だった。
何から何まで申し訳ないけど、本人がやる気だから、任せてみたくなる。
「日にちは聞いたからうーん……そう聞かれたら困るな……」
「じゃあ無難に行きたいところを聞いてみるよ」
「サンキュ。
じゃあ放課後、校門前で待ってるから」
「うん!
絶対、いい結果残してくるから!」
……サンキュ……そしてごめん。
俺なんかが友達で。
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