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第13話

 待ち望んだ熱情は、想像よりもずっと狂おしく身を焦がした。  ナストゥーフの唇が、手が、肌の上を滑り降りていく。触れられるそこここから甘い痺れが沸き起こり、私はただ息を吐いて悶えるばかりだ。 「貴方は物覚えがよいのですね、アスラン様。俺の教えた事を全て覚えていらっしゃる」  肌に触れながらうっとりと、ナストゥーフは笑う。初めて見る彼の体には無数の傷跡が残っている。  戦う男の体。彼は最初「醜い物をお見せします」と口にしたが、なんの醜い事がある。こんなもので、覚める熱ではない。  それでも、ナストゥーフは仮面を外さなかった。今も、左目には銀の仮面がついている。胸に吸い付き、温かな舌で愛撫される感覚に喘ぎながらも、私は手を伸ばしそっと紐を解いた。  外れた仮面に、ナストゥーフは嫌な顔をする。拒むように睨まれる。だが私はこの傷も含め、愛したいと思うのだ。私を守って負ったこの傷ごと、全てを受け入れたい。その証に、体を起こし痛々しく残る傷跡に口づけをした。 「なにを!」 「お前の傷の全てを、私は醜いなどと思わない。お前のこの傷も、私にとっては愛しいものだ。だから、隠さないでくれ。せめて私とこうして抱き合う時だけは、ありのままのお前が欲しいんだ」  困った顔は、泣きそうにも映る。仕掛けられる口づけに、体の力を奪われていく。再び上体が後ろへと倒れ、覆い被さるように深く舌を絡め唾液を飲み込み、ただそれだけで芯が熱くなっていく。 「欲しいと仰るなら、この身も魂も貴方のものに」 「んぅっ……はっ……そんなには、貰えない……ぁっ」  手が悪戯に尖った乳首を撫でさする。ザラリとした硬い手の平全体で触れられ、ビリビリと腰と背に響く。恥ずかしく腰が浮き、既に立ち上がった男茎をナストゥーフの腹に擦りつけた。  それだけで、下腹に甘美な刺激が走る。何度も何度も擦りつけたい衝動にかられる。まだ達してはいけないと己を叱責しても、緩く揺らめく事を止められない。 「腰が、動いておりますよ」 「とまら、なぃ……っ!」 「乳首が相変わらず弱いのですね。愛らしく尖って、とても美味しそうですよ」 「んぅぅ!」  美味しそうなんて、そんな風に言われるのは恥ずかしい。  そんな私の気持ちを知ってか、赤い果実を食むように甘噛みされ、ビリリと痛む。だがすぐにそこを舌が丁寧に撫でるものだから、痛みに疼きが混ざり合っていく。 「もう、そこは止めてくれ……あぁ! お願いだからぁ」  乳首を責め立てられ、彼の腹に自らを擦りつけるだけで達してしまう。逞しい腹筋に先端を擦り、頭がぼやけ始めている。知っているんだ、このまま少し強くされただけで達してしまう事を。ここまで来れば上り詰めるのはあっという間なのだ。  ナストゥーフは嬉しそうな顔をして、ゆっくりと唇で触れながら下へ下へとずれていく。そして、熱く滾る男茎を手に取り、亀頭を喉奥へと飲み込んでしまった。 「あぁぁ!」  ぬるりと熱い口腔が硬く張り詰めた昂ぶりを吸い上げ、輪にした指が早い動きで的確に擦り上げる。力の入らない足でシーツを蹴って皺を作り、私はあっけなく彼の口の中に熱を放った。  ナストゥーフの喉が、コクリと上下に動く。尚も吸い付き、一滴も残さず吸い出される。彼の舌が唇を舐め、鋭い笑みに色香が増していく。  綺麗だ、そして雄々しい。見つめる先で私の足は両側に開かれ、香油が垂らされる。ナストゥーフの手によって開発された後孔は彼を拒まない。節の立つ指がゆっくりと埋まり、知っているように内壁を刺激する。 「うっ、あぁ……」 「いつも思っておりました。貴方のここはとても熱くて、俺の指を美味しそうに吸うと」 「あっ、そんな…ことぉ……っ」 「具合が良いのだと、すぐに分かりました。襞も多くていらっしゃる。貴方の中に触れる日は毎日、己の熱を逃がすのに苦慮いたしました。ここに、自らの欲望を押し当て擦りつけ、たっぷりと蹂躙できたら。その想像だけで何度でも、熱く滾ってしまって」  そんなふうに、見ていただなんて。事務的な顔をして、これは命令で仕方なしなんだという様子だったから知らなかった。  知ればカッと身の内がまた熱を持つ。一度吐き出し萎えた部分が再び持ち上がる。下腹の奥が熱く熟れ、触れられる事を願っている。 「興奮してくださるのですね。また、絡みついてきた」 「あぁ……ほ、しぃ……ナストゥーフっ」 「はい、俺も欲しい。受け止めてください、アスラン様」  解す指が抜け落ち、後孔に熱い欲望が触れ、押し入ってくる。受け入れた事のない質量の肉棒が身を穿つのに、私の体は悲鳴を上げた。苦痛に身が縮む。引き結ばれた唇に、ナストゥーフの唇が触れていく。貪るように口腔を弄られ、舌を絡め取られていく。  穿つ圧迫感と痛みは徐々に薄れ、与えられる口づけに夢中になっている。息継ぎに離れてはまた触れ合い、しっとりと濡れる彼の背に手を回す。しがみつき、震えながら……やがてしっかりと彼の肉棒を全て飲み込んだ。 「はぁ……あっ、ぜん、ぶ?」 「えぇ、飲み込みましたよ」  ぴっちりと埋まる逸物を感じる。何度か息を吐くと、徐々に力が抜けていった。圧迫感に腹の中が苦しい。けれどこの熱がとても愛おしい。 「この時を、何度も夢に見ておりました。いけないと思えば思う程に、呪いのように」 「ははっ、大げさな、っ」  押しつけるように奥を突かれ、息が止まる。指で感じていたものとは違い過ぎる力強さと逞しさ。それが、快楽のツボを抉り出す。 「大げさだなんて、とんでもない。想像以上で、我慢ができません。もう他では満足できませんね」 「あっ、はっ、あぁぁ!」  揺さぶられるように穿たれ、その度に抉られ、クラクラと理性が霞む。  欲しい、気持ちいい、早く解放されたい! 「ナストゥーフ! あっ、もっと欲しい!」 「えぇ、全てを貴方へ。お望みのままに」  鋭く笑うナストゥーフが腰を捕らえ、逞しい動きで最奥を突き上げる。首に手を回し、必死にしがみついているのが精一杯だ。押し広げられるその太さも、脈打つような逞しさも感じる。 「愛しています、アスラン様」 「あっ、私、も……あぁぁ! ナストゥーフ!」 「くっ」  最奥を抉られ、同時に前を擦られて、吐き出した白濁が二人分の腹を汚した。一度では足りず、二度、三度と腰を振り後孔を締め付けて吐精するなか、低く色のある声で呻いたナストゥーフも最奥に押し当てたまま動きを止めた。  腹の底を叩く熱い奔流を感じる度に、更に欲するようにキュッと締まる。繋がったまま、心のままに口づけて、最後には幸せに笑っていた。 「愛している、ナストゥーフ。どうかずっと、私の側に」 「俺でよければ、どれほどまでも。貴方が許す限り、お側に」  結婚の誓いのように、互いに繋がったままで交わされる約束。抱き合い、誓いの口づけをして。  二人の夜はまだ深く、続いてゆくのだった。

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