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第2話 シアワセ 1-2

 首に巻きついてきた腕をそのままに、三木の身体を玄関に引き入れると、俺は扉を施錠しそのまま歩き出した。 「先輩待って、靴脱ぐ」  引き摺られるように家に上がりかけて、三木は慌てて靴を足で蹴飛ばし玄関に転がした。 「酒くせぇぞ」  首や頬に顔をすり寄せてくる三木に俺は思わず顔をゆがめる。だが三木は小さく返事しながらも、背後霊の如く背中に張り付いて離れない。  仕方なく三木を無視して俺は先ほどまで座っていたリビングの一角に腰を下ろした。 「いま忙しいんだ?」  テーブルの上にあるノートパソコンを覗きながら、三木が小さく呟く。 「いや、今日はもういい」  座ってもなお離れる気がないらしい三木は、俺を背中から抱え込むようにして背後に座っている。腰に両腕を回し、顎を肩に置かれている状態でどうやって仕事をしろと言うのだ。  ため息混じりにパソコンの電源を落とし、それを閉じた。 「今日、ダチの結婚式だったんじゃねぇの。なにそんな通夜みたいな顔してんだよ」  そうだ、今日は朝から慌ただしく準備をしていた。  いつもは癖毛なんだか寝癖なんだか分からない頭なのに、今日はしっかりセットされている。普段着ることの少ないスーツがさらに珍しくて、馬子にも衣装だと言ったらにやけた顔しやがった。 「先輩好き」 「答えになってねぇ」 「俺はずっと広海先輩が好きだよ」  抱きしめられてるんだか、抱きつかれてるんだか分からないくらいに、ぎゅっと三木の腕に力がこもる。  その様子に俺は視線を落としため息をつく。 「なんか言われたか」  気落ちしている理由がなんとなく分かった。

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