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第16話 スペア 1-1
いつの間にか一緒にいるようになって、そしてそれが当たり前のようになってきた頃から、不安にはならないかと周りによく聞かれるようになった。気まぐれや間違いだと思いやしないのかと、何度も言われた。しかし不思議と自分は、いままであいつの行動や言動を疑ったことが一度もない。
それはなぜかと聞かれても、ないものはないのだとしか言いようがなく、それの答えは随分と経ったいまも変わらないはずだった。
「広海、まだワン公と付き合ってんの? 意外と長くね?」
カウンターとテーブル数席しかないさして広くもない小さなバーには、その半数を埋めるほど客の姿が見受けられた。そんな手狭な店内で、カウンターの奥二席を占拠してかれこれ二時間ほどか。そのうち間違いなく三十分以上は寝ていた男が、急に思い出したように人の顔を指さした。
「早く終わるとみんな思ってたんだけどなぁ」
「どうせ賭けてたんだろ。お前らの得意ワザだよな」
肩をすくめ脱色した頭を掻くその仕草に目を細めれば、ニヤニヤと笑って男は空になった自分の煙草の箱をくしゃりと握り、人の煙草を抜き取る。
久しぶりに会ったが、驚くほどに能天気で大学の頃から全く成長がない男だ。
「まぁな、全員別れるって言うから全然賭けになんなかったけどな」
「そりゃ悪かったな」
「マジありえないって、お前ら付き合い始めてどれくらいだよ。大学の頃からだと五年くらい経つんじゃね?」
「どうだろうな」
この男を含めて五人。大学時代よくつるんでいた奴らがいる。とにかく面白いと思ったことはなんでも賭け事に発展させる大騒ぎが好きな集団だ。
「だってよ、お前がああいうタイプと上手く行くとは思わないだろ。広海はおしゃべりな奴も束縛する奴も嫌いじゃん」
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