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第21話 スペア 2-3

 いまだ固まっている三木の身体を足で押し退け、間抜け面に目を細める。明らかに酔いも覚めたような表情で目を彷徨わせているその反応は、少なからず匂いが移る心当たりがあるということか。 「広海先輩、これはそういうんじゃなくて」 「あ? なにがそういうことだよ」 「だから職場の子がちょっと酔っ払って」 「なにを言い訳してんだよお前」  なんでもないと言えば済む話だ。こんな下らないことを、真剣に言い訳されればされるほど白けてくる。  真っ青な顔をしてうろたえる三木の姿に、思いのほか重たいため息が漏れた。俺もなにをこんなにイライラしているんだ。――馬鹿馬鹿しい。 「俺、ほんとに先輩しか」 「電話、お前の鳴ってるけど」  口を開きかけた三木の声を遮るように、見計らったようなタイミングのよさで、リビングの片隅に置かれていた鞄から突然軽快な着信音が鳴り響いた。 「え? あ、いや」  しかもそれは躊躇う三木をよそに一向に鳴り止む気配がなかった。俺は舌打ちしながら立ち上がり、耳障りな音を発する携帯電話の通話ボタンをした。 「あ、瑛冶さん? さっきは送ってくださってありがとうございましたぁ。すみません私、酔っ払っちゃって。あ、遅くなって彼女さんに怒られませんでしたぁ?」  スピーカーから漏れ聞こえるちっとも酔っ払っていなさそうな声に、自然と眉間にしわが寄るのが自分でも分かる。そしてこちらの反応などお構い無しに話し続けるその声に、さらに苛立ちが募った。 「……あんたえげつねぇな。付き合ってる奴いるの知ってて、よくもぬけぬけと言えたもんだな」

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