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第26話 パフューム 1-1
人生にモテ期などなかった自分に、今頃そんな時期がやって来た?
高身長ばかりが目につくそれ以外は、平凡そのもの――はっきり言って奥二重でちっとも目元ははっきりしていないし、鼻が高いわけでもなく、パッと見ても印象薄そうで冴えないし。性格的にも性質的にも特出した部分はほとんどない俺は、この二十数年、正直モテた試しがない。広海先輩のことを好きになるまでは、ことごとく玉砕し続け、付き合った数は片手が随分と余るほど、と言うか、たった一人。そして交際期間は一ヶ月。
そんなこの俺にほんと今更だ。なんで急にこんなことになったのか、よくわからないと言えるくらいの奇跡が最近、何度も起きている。しかしこれで何度目だろうか。いまこられても非常に困るばかりでどうしようもないのに。
職場の休憩室で急に呼び止められた。こちらはもうすでに、荷物を手にダウンジャケットまで着込んで、帰る用意万端だったと言うのに、勢いに気圧されて立ち止まる羽目になってしまった。
「ごめん、無理なんだ。付き合ってる人いるし、その人以外考えられないから」
「で、でも! 噂に聞くと瑛治くんの彼女ってすごい我が儘で、喧嘩よくしてるって聞くよ」
突然の告白に戸惑いながらそれに返事をすると、俺の言葉に半ばかぶせる勢いで反論が返って来た。
「えっ……噂?」
噂になるほど、付き合っている人がいることを公言しているつもりはないのだけれど、一体どこからそんな話が漏れるんだろうか。
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