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第25話 スペア 3-3

 お互いの不安定な距離感。なぜ一緒に居るのか、なぜ俺は三木の手を離さないのだろうか。はっきり言って自分でもよくわからない。考えたこともない。  しかし人の言葉に我に返る。  自分にとってこの男は、本来ならば相容れない性格なのだ。けれど不思議なほど苦もなく傍にいられた。それは三木の言葉を借りるならば――嫉妬するくらいは好き、と言うことなのだろうか。 「えっと、こ……恋、人? ですよね? 俺だけ? 思ってるのって俺だけ? これって図々しい感じですか?」 「恋人、ね」  いままで付き合おうと言われたことも、言ったこともない。好きだなんて俺は一度も言ったことがない。それでもこの関係はそう呼ぶのだろうか。 「えっと、じゃぁ飼い主と飼い犬?」 「……馬鹿だろうお前。ったく、眠いんだよ俺は、さっさと風呂入って寝るぞ」  本当にこいつが犬ならば、長い尻尾が垂れて股の間に隠れてしまいそうな勢いだ。ため息混じりにそんなデカイ駄犬の首根っこを掴むと、俺は脱衣所に引き摺り込む。  俺達の関係性がどんなものなのか、深く考えるのはやはりやめることにした。ただ言えるのは、このしょぼくれた男は、俺にとって代わりの利かない人間だということだけ。  いまはそれだけわかれば充分だと思った。 [スペア / end]

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