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第24話 スペア 3-2

「泣くほど嫌だった?」 「泣いてねぇ」  瞬くたびに零れるものが三木の手を濡らすが、それは見なかったことにした。 「ごめんなさい、ちょっと調子乗りました。広海先輩があんなこと言ってくれるとは思わなかったんで」  すっかり酔いも覚めきったのか、三木の口調がいつものように微妙な敬語に変わる。 「調子に乗ってんじゃねぇよ」 「あのっ、言い訳じゃなくて、さっきの子とはほんとになにもないですから。付き合ってる人いるって言ってあるし、その人以外は興味ないって断ったし。俺は広海先輩だけだから信じて」  しゅんと萎れたように覇気をなくし、三木は半泣きもいいとこだ。しかしわざわざ言われなくとも、この男がよそ見出来るほど器用だとは思っていない。元々俺が苛ついてる原因はこいつじゃない。 「だったらさっさと風呂入れ、臭くて苛々する」  触れたくて仕方がないと思うのに、触れられないことがもどかしい。違う匂いをさせていることが腹立たしい。 「す、すいません。即行で入ってきます」  なぜこんなにも腹が立って仕方がないのか。それは多分きっとこの男が――自分のものだと思うからだ。だからこそいままで疑うことがなかった。けれどいまこうして疑心暗鬼になるのは。 「……三木」 「ん? なに、広海先輩」 「お前にとっての俺はなんだ」 「え?」

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