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第1話
僕は白石 友樹 、どこにでもいるΩの男子高校生だ。平凡な日常を送っていたが、ある日突然 異世界に飛ばされた。
と言っても召喚されたわけじゃない。この世界では異世界から紛れ込んでくる人がいるんだって。僕もそのうちの一人で、たまたまこっちに落ちてきたらしい。
って事は、僕は勇者として旅立つことも神の御子として人々を救うこともしなくていいわけで。まあ、やってと言われても出来っこない話だけど、じゃあ僕、この世界にいらないじゃん。もうっ。神様 恨みますよ~。
そしてコレ大事!この世界は獣や半獣が多くて純粋な人間は少ないらしい。しかもその人達はαやβ、Ωなどの区別がないんだって。え、じゃあΩの僕と番 ってくれるαの人はいないの?そんなぁ。
でももう番 の事はいいんだ。だって、こっちの世界で気になる人ができたから。人っていっても下半身は人じゃなく馬だ。つまりケンタウロス。元の世界では神話の中にしか存在しなかったけど、こっちではちゃんといるんだよ。腰から上は人間、下は馬のケンタウロスさん。すげー!
その人は僕が森で弱っているところを見つけて保護してくれたんだ。森の自警団の団長さんで、アレクシイさん。みんなにはアレクと呼ばれて親しまれているよ。
見知らぬ世界に落ちてきて右も左も分からず、帰りたくても帰り方が分からなくて不安でグスグス泣いてた僕を抱きしめ、
「大丈夫だよ、何も心配いらないよ」
ってずっと囁き続けてくれた人。おかげで僕はパニックにならずに済んだんだ、優しいなあ。それにアレクさんは、弱っていたとはいえ男子高校生の僕を森から抱っこで運んでくれたんだよ。すごい力持ち!
右肩に優しく光る大きなトライバルタトゥーがお洒落 だし、尾っぽと一緒で緩 く流れる長い銀髪も綺麗だし、馬の体の筋肉も滑 らかで気持ちがいい。頼りがいがあって部下にも慕われてて、とても綺麗で逞しくて、そういうのが全部好きだけど、そうじゃなくて、なんていうのかな……
アレクさんといると安心するんだ。
何だか、全てから守ってもらってるような気持ちになる。アレクさんが僕の目を見てふっ……と笑うと、体中に暖かい何かが駆け回るんだ。向こうの世界にだってこんな気持ちになった人はいなかった。
凄く好き。
僕、この人と一緒にいたい。
でもアレクさんにとって僕は異世界から迷い込んだ人間の子供であり、同族のケンタウロスじゃない。一緒にいる理由も方法も見つからない。
せめて、自立して友達ぐらいにはなりたいな。
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