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第2話

とりあえずオレは、社会人5年目の23歳。 独身とかそう言うのにはまだ縁遠いお年頃。 会社は老人対象のパソコン講習の主任。 先生方が教えてオレは、その人に見合った授業内容のプログラムを組む。 それに合わせて勤怠調整とかそう言った仕事が基本で、現在オレを捨てた〝元〟彼氏は、嫌な事にオレの部下でもある。 やりずれぇったらありゃしねぇ。 溜息しか出ないが、仕事は疎かには出来ないから勤務表を開いて、人の()けた静かな教室で声を掛ける。 「佐久間さん、悪いけど明日から遅番で来れます?」 早番が9時から18時で遅番は13時から22時迄。遅番はオレと元彼の〝佐久間(さくま)〟この人は30歳で、まぁ...結婚適齢期だよな。 「あー嫁が煩いから早番多くして欲しいって言おうと思ってたんだよ。 もう少しで子供も産まれんだ、調整頼むな」 ...遅番に人員を増やせと言う事かと溜め息をつく。 あんなにベットで熱くオレを壊す程抱いた男も、家庭を持てばこんなもんか。 「解りました、調整して見ますが遅番入れるの佐久間さんとオレだけなんで、もう一人入るまでは辛抱して下さい。」 パタンと、出勤簿を閉じて言えばあろう事かオレの髪に触れてクスクスと笑う。 「頼んだよ」 耳元でゾクリとする様な甘い声を掛けて部屋を出ていった。 俺様都合だよほんと。 遅番のオレが他の奴に言い寄られたくないからと遅番ばかり入れさせたのは自分だろうが。 もう今更そんな事もどうでもいいってのは良く理解出来た。 求人冊子に、募集をかける手配を済ませて、会社を出る事にした。 湿度を孕んだ重苦しい空気が、あたりのコンクリートを湿らせてるように肌で感じながらオレは、一度会社の入ってるビルを見上げてから帰路へ付いた。 会社の人と付き合うべきではないな。 駅前の明るい街並みが少し奥に入ると一気に暗さを帯びる。 街灯の明かりに、夜光虫がひしめき合いそれを少し離れた場所で罠を張る蜘蛛の巣。 それを横目に公園を横断すると家が近いからと公園へと足を踏み入れたら、いつもは暴走族が溜まる場所だが、今日は人の姿さえ見えなかった。 公園を抜けて自宅へ向かう道すがら、数人の男がバラバラとオレを見て慌てたように逃げていって、人が出て来た路地が気になり覗き見たら...。 「おいおい、勘弁してよ」 災難続きかよと溜息を吐いてもいいよな?

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