3 / 107
第3話
だって目の前には明らかに殴られてボロボロになった男が転がってんだから、そりゃうんざりもするだろ?
救急車でも呼べばとりあえず、無難に難を逃れると思って携帯を出した時だった。
「通、報は...やめ...」
掠れた低いバリトンの声に携帯をタップしようとしていた指を止めた。
とりあえずは死ぬ程の傷でも無さそうだし
仕方なしにオレは男の身体を起こして、腕を自分の首に回すと身体を支えた。
「歩けんだろ?とりあえずオレん家《ち》行くぞ」
こんな所で死なれても後味悪いし、車が時折通る道だから、倒れたままで道路に寝てれば轢かれる恐れまである。
オレはこうやって、最悪の拾い物をしてしまった。
この時は、まさかこの男が、オレのこれからの道に深く入り込んでくるなんて、考えもしなかった。
......................................................
自宅は二階建てのアパート。
鍵は、今時の形を真似にくい鍵ではなくそこら辺で、作ってもらえるような甘い鍵。
オレはポケットから、鍵を取り出せばチリン...と高い鈴の音を鳴らす。
亡くなった母さんの、持ち物をオレはそのまま貰ったんだ。
男の腰を支えて鍵を開けると部屋の臭いにいつもの場所と記憶した脳が安心感を感じさせてくれるのだが、今回は想定外の匂いがオレの横にある。
チラリと見たら、痛そうに顔を歪めてだらりとしてるので慌てて部屋へと誘 った。
そんなドアを開けば中は12帖のワンルームで、細い通路に全て備わっている。
左手には風呂とトイレ、右にはキッチンだ。
12畳の広さにここを決めたようなもんだ。
一番奥にベットが有るからオレは靴を脱いで脱がせて引き摺るように運んでベットに男をぶん投げる。
「っ、ぅ...」
と、小さな唸り声は上がったが文句は出なかったのでオレはその男の血やら泥やらで汚れた汚い服を剥がす。
下着一枚にして見れば、結構殴られたのだろう。あちらこちらにアザが広がっている。
鎖骨あたりは腫れてるようでそっと触れると熱を持っていたから、保冷剤をタオルで巻いてから長めの包帯で巻いて留める。
顔は生傷が多くてコンクリに擦り付けた様な擦り傷に、大きいガーゼ絆創膏を貼り付けて他は、絆創膏をペタペタと貼り付けた。
それにしてもと、オレは溜息をついた。
金目のモノがキレイさっぱり無くなってるのだ。
やっぱり警察に届けるのが良いのでは無いかと、ベットに横たわる男を見た。
ともだちにシェアしよう!