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第86話

とりあえず合流して、オレの風呂敷バカ笑いしやがった。 「やだー松、風呂敷ってイケてる!しかもヒヨコさん!」 うるせえ。 「さっ、ひよ松君行こうか」 勝手にあだ名つけて、球場に入った。 長蛇の列に並び、夏樹がとったチケがどれだけいい場所かを知って、驚いた。 ベンチがしっかり見えるし、距離的にも顔も認識出来るくらいの距離だ。 夏樹様々なので拝んどいたが夏樹は、ホモウォッチに必死だ。 あのイケメン二人いいっ!とか、あの高校生っぽい二人、どっち受け!? とか、ありえん妄想繰り広げてる横でオレは高鳴る心臓に潰されそうだった。 周りには正当なファンが沢山いて、二つ横の席には、クロの...雑誌の裸を貼り付けた団扇持ってて...あれ、オレってライブに来たんだっけと一瞬疑った。 そんなこんなで俺の中のドキドキはワクワクの相乗効果でヤバイ位の高揚感を持ってからハッと我に帰った。 クロはあれから一度も連絡なしなんだぞ? なんで浮かれてられるのか。 オレは今捨てられたも同然じゃねぇの? 薄暗い思いに支配されて、その気持ちを見て見ぬ振りしていたしっぺ返しが来ていた。 「松っ!」 一人どん底で沈んでたら夏樹に、肘鉄食らった。 脇腹にヒットしてゲホゲホ咳き込む。 「顔暗いと、クロちゃん見ても気付かないよ!」 「気付くだろ...」 「ツンデレ卒業なんだから、ここから、好きだー!って叫んでね。」 夏樹が鬼に見える...いや、鬼だな。 ホモ公表してどうするんだとため息を落としながら、綺麗に整備されたグランドを見た。 綺麗に整備された石ころ一つないグランドで、こんなにも客席を埋める。 そんな舞台にあの、河川敷でスライディングしたらたまに石があったりしたあの当時とは全く違う。 バックスクリーンに、名前が点灯してもうすぐ始まるのか周りがざわめき立つ。 クロは先発ではなく、控えの選手なのだろう。 名前は載ってなかった。 オレがアイツをカブと呼んでいた時代は急激にオレの中で思い起こされていく。 土臭い中で、横にあった大きな川の音を聞きながらひたすらに白球を追いかけた。 あんな小さな球を大事に、落さないようにと、ひたすら練習を繰り返し、球が見えなくなる位にオレたちは遅くまで練習をしては、ぐったりと家に帰った。 確かクロはじーさんが迎えに来てたな。 なんて懐かしんでたら、目の前に選手が並んだ。

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